Mark Levinson ML-2L レストア録3 Theトランジスタ

憂鬱なOLD Mark Levinson 整備録 ~3~

OLD Mark Levinson ML-2L(mono power amp)maintenance トランジスタ全交換&電圧計測


マーク・レビンソンのML2Lの整備録3回目です。ML-2Lのトランジスタですが、国内では4台分が揃わなかったため、アメリカで厳選したトランジスタを確保いたしました。特性表も付属したもので製造年等も揃っています。現在入手可能で、特性的にも問題のないものです(かつてのモトローラ製造ラインで製造したTr)。現在ML2L本体に装着し、ダミー抵抗8Ωとして全トランジスタの電圧を同時に計測し調整中です。

ML-2Lのブロックを取り外した写真です。

ML2Lトランジスタ(マッチング)

下記の写真はML-2Lが動作する仮想シミュレーション状態を作り、すべてのトランジスタの電圧や各所の電圧を”同時”に計測しています。1台あたり全て同時計測するためには、15台のDMM(デジタル・マルチ・テスター)が必要です。さらにML-2Lのサービス・マニュアルの数値と合わせていきます。おそらくこういった状態での整備はアメリカを含めて世界でも希少だと思います。またサービス・マニュアルにすべての数値が載っているわけではありません。極端に言うと『ジョン・カールの狂気の領域』まで踏み込んで調整する必要があります。数値の案分を考慮してバランスを取るという極めて憂鬱な気の遠くなる作業です。創造的な仕事をしない限り完璧なML-2Lとなる整備作業は出来ません。

 

ML-2L動作ダミー負荷装置による計測。

Tr 1ペアポン替えの修理でよければ何もこんな大がかりなダミー負荷装置を造る必要はありません(細かなケーブルはすべてトランジスタ等に配線しています)。普通なら置き変えた1,2個のTrの電圧と電流等を図るだけです。とても簡単です。数時間の作業でしょうか。それでも一聴はバランスしている様に聴こえます。ところが計測するとTr毎に流れる電流等はバランバランな状態で、抜けているコンデンサーも多数ある状態で動作しているわけです。残念ながら整備コストとの兼ね合いからほとんどのML-2LやNo20シリーズはそういう状態です。

この段階で更にNGとなる部品が出てきています。しかも特殊なパーツですので憂鬱です。

Mark Levinson ML-2L電圧測定中(9台のDMMで計測中)

Ml-2LやNo.20シリーズ所有のお客さまがこちらの「憂鬱な~」ページをご覧いただき、問い合わせを頂いていたりします。ここまでの整備は本当に最高の状態の物が欲しい場合を除きおすすめしていません。整備コストが尋常ではなくなります。この整備ですと当社の買取価格程のコストがかかります。しかしながら、各種の計測値をみると「狂気のパワーアンプ」という意味が大袈裟ではないのです。

発売当時の評論家の方々はML-2Lの音を聴かれてそう感じたのかもしれませんが、計測数値は当時のどんなパワーアンプともかけ離れた設計の凄みや高みを目指した妥協のなさが読み取れます(前回参照)。私も技術担当からレクチャーを受けないとわからない部分がありました。

 

かつてのハイエンド・アンプの理想を追い求めたML-2L。

ML-2Lを設計年代の古さで語る事はこのアンプの正常状態を知らないか、回路を読めない故に設計者の意図が読み取れないということの裏返しでもあるのです。
正常なML-2Lは存在しないので、設計者の意図通りに甦らせるしかありません。そうすればDan D’AgostinoやSPECTRAL、Ayreの最新アンプと比較しても何ら臆する事のないパワーアンプの一台となります。音の表現せんとする事は別としてですが、最新アンプに使われている筐体以外の部品を見て行けば理解できる方はできます。

ML-2Lの狂気・・・と言われてきた狂気(正気)を取り戻して、本当の音を聴きたいという思いだけです(笑)

このML2Lですが、ダミー抵抗8Ω負荷時のオシロスコープのクリップ状態直前の位相反転も綺麗な波形となり、実質的な最大出力値は38Wでした。公称25w(8Ω負荷)です。ジョン・カールが30数年前にクリップしない設計出力値として設定した約40wでした。その設計最大出力値を現時点で安定的に計測できました。


このML-2Lを担当している技術者はプレッシャーとストレスとの格闘です。文句も弱音も『もう、やんねー』も聞こえてきますいずれLNP-2LやML1Lのモジュール系やML7L、No.26Lこの辺りのプリもやりはじめます。

おつかれさまです!!

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