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Mark Levinson ML6 目の前の空間が、音楽の彫刻になる 

Mark Levinson ML6L mono PRE AMPLIFIER|レビンソン・プリアンプ

目の前の空間が彫られ、浮き出る音像、

滲みいでるサウンドステージ。 

Mark Levinson ML6 Overhaul【更新】

分解能や解像度、情報量を追求するプリアンプがある一方で、

何はさておきテンション高く空間に音楽を彫り込んでいくようなプリアンプもある。

アプローチはちがいますが何れも音楽の核心にせまるプロダクト。

Mark Levinson ML6 モノラルプリアンプのオーバーホール整備

去年1セット入荷したML6と同タイプでシリアル番号も近いML6。こちらも入荷後すぐにオーバーホール整備を行いました。今回は電源ユニットのブレーカースイッチに緩みがあったため2個とも新品(純正)へ交換しました。

cello ENCORE 1MΩ LINE GOLDモデル

余談ですが、同じく持参されたcello ENCORE 1MΩ GOLD。とても滑らかで艶感あるサウンドのアンコールでした。

Mark Levinson ML6 PRE AMPLIFIER|RFエンタープライぜス正規品シリアル連番

ML6の電源部の4700μF SPRAGUEコンデンサをSPRAGUE 53Dへ4本とも交換。スペクトロール製シングルボリュームは2個とも分解整備を行いました。ちなみにこのボリュームは0.2㎜回転しても正確な減衰が保持される航空軍事用パーツだと思います。本体フィルムコンデンサーは規定通りだったので交換しません。

Mark Levinson ML6 PRE AMPLIFIERのオーバーホール整備(25個ほどの部品を交換)

本体の消耗部品の交換、切替スイッチ類の接点清掃、モジュールチェック、基板チェック、スペック点検などを行いました。

Mark Levinson ML6 PRE AMPLIFIERのオーバーホール整備

DCケーブルは長めの非純正ケーブルでしたのでベルデン製へ交換。

Mark Levinson ML6の試聴チェック

整備ログは整備系の記録という事で試聴レビューまでは書きませんが、良い感じの仕上がったので試聴レビューも書いてみます。

Mark Levinson ML6プリアンプ。これは John Curlが設計したJC2(ML1)がベースになり、電源からボリュームセレクタなど全てがモノラル化されたプリアンプです。

贅沢なコンストラクションのMark Levinson ML6

もちろんJC2やML1Lなども魅力があります。ちなみに今在庫中のML1L(後期)オーバーホール済のサウンドもとても良いのです。ML6とのちがいは2倍の電源部、別筐体による左右チャンネルのセパレーションです。

 

魅力的な声なのに…録音リマスタリングのチープな盤はどうか?

試聴盤は10代の頃に聴いていた盤なども含むJPOPからOLD JAZZまで。今回は世界でも流行の兆しがある1980年代の日本のシティPOP(大瀧詠一さん、山下達郎さんなど)。リマスターしてあるそうですが、、、それが冗談みたいに酷い出来。当時の彼女が歌いたかった世界観がこれにあるとは思えないほどの駄目なプロダクト。

まず、音が栄養不足のように細くてキツくて、潤いがない。ハイのキラキラ&シャリシャリ感が凄い。知り合いのスタジオでY社のデジタルミキサーがあってそれを通した時の好きじゃないサウンドと似た感覚。

1980年代のJPOP 門あさ美さん

歌っている門あさ美さんの歌声はとてもアンニュイで今でもゾクっとする切ない望みと諦観が交錯する大人のJPOP。舌足らずのような…..声にヴィブラートがかかるような、不安定な揺れが女性心をあらわしたかのようです。

この方のような歌い方をされるシンガーはいないと思います。当時は松岡直也氏や高橋幸宏氏などがディレクターを務めていたと記憶。参加ミュージシャンも有名な方達が参加。僕は中学生頃に聴いてゾクっときた口でした。

門あさ美/ホットリップス

今聴いて懐かしくもあるけど、瞑想に近い感覚になる貴重なアーティストです(現在活動されていない事が残念)。ですが「CD製作プロダクト」が全てを駄目にしている典型。この盤だけではなく、当時の日本のJPOPの多くのオリジナルマスタリングでもリマスタリングでも、クソ真面目な几帳面な音でギスギスしたデジタル臭。。。おかしな音で誰もがデジタルを模索していた時代だったと言えるかもしれません。

なので、駄目な盤として聴くことがあります。

Mark Levinson ML6 では声だけが空間に斬れ込み、無理やりのせたようなアンビエント感が消える。ML6で聴くと当時のアナログミキサーが16TR、24トラックかな?と想像できる感じでスピーカーの間に展開されます。トラック事の楽器振り分けが良くわかります。エフェクトの類や量や質なども分かる感じです。

こうしたプリアンプとATCなどのモニタースピーカーで聴くと音楽プロダクトの良し悪し(こだわり具合やセンス)がわかります。

Mark Levinson&Marcin Wasilewski &Miles Davis

試聴盤|門あさ美、Marcin Wasilewski 、MILES DAVIS、マーラーなど

 Mark Levinson ML6の真髄が聴けるソースは多数あると思いますが、1枚を挙げるのなら、昨年他界したエンジニア、Jan Erik Kongshaug が手掛けたMarcin Wasilewski TRIO|ECM盤。イタリアのエンジニア、Stefano Amerio とよりも芯があるサウンドでML6などのテンションがよりサウンドの魅力を引き出します。

 

Marcin Wasilewski /TRIO/ECM

Björk のHyperballadのシンバルの超分解しながら芯を残し、バスドラムが奥深くで大地の鼓動、雷鳴のように鳴るエア感は3人だけの演奏に素晴らしい遠近感をつけます。Marcin Wasilewski のしっかりしたタッチ、凛々しさもしっかり描く表現。

印象深い盤はMILES DAVISのKind of BlueのBill Evansが担当したモーダルな楽曲の濃密かつ”間”を感じさせる空間感。さらにベースのダークな響きかつ深く沈むがしっかりした音階などはそうそう聴けないと思います。

MILES DAVIS/Kind of Blue/COLUMBIA

目の前が音楽の彫刻になるMark Levinson ML6&MILES DAVIS/Kind of Blue/COLUMBIA

今回一番印象に残った盤はMILESの「SKETCHES OF SPAIN」。ギル・エバンスがアレンジしたスペイン組曲。オーケストラ構成でコンポジションがきっちりした中で、歌の部分をマイルスが即興でミュートtpで描いていくスタイル。このサウンドの色合いやトーンをどう表現するかはなかなか難しい。スペインの暗い哀愁とギルエバンスがパート毎に緻密に色分けした彩色。

ML6で聴くSKETCHES OF SPAINはこれまでの再現ではベストの一つ。音の強さ!コントラストと抑揚、アレンジ通りに登場してくる各パートの演者がスピーカーの間に屹立する様はすごい、の一言。ATCのスピーカーの2倍の高さにマイルスのミュートが原寸大で聴ける……………ユニゾンで溶け合う管楽器の数までも数えられそうな音像。やはりなかなか凄いML6です。

Mark Levinson ML6 PRE AMPLIFIER

ちなみにSKETCHES OF SPAINの録音を終えたマイルス・デイヴィスのインタビュー「『SKETCHES OF SPAIN』をやり終えると、オレには何も残っていなかった。すっかり空っぽになった。完璧に、何もかもだ。感情のすべてを吐き出して、難しい演奏を全部やり終えた後は、もう聴き返したくもなかった。」と語ったそうです。

Mark Levinson ML6 PRE AMPLIFIER

整備が終わったチェックですがこれから本体の交換部品や電源部のコンデンサーなどが馴染んでいくものと思います。今週、ご予約のお客様が聴かれてどうされるかわかりませんが、もしチャンスがあれば入手されてください!

ハイエンド黎明期の John Curl&Mark Levinsonが造ったベストなML6の一台です。