Mark Levinson No.20.6L restore.6

Mark Levinson No.20.6Lフルレストア整備 No.6

技術担当のNo.20.6Lの回路・部品からの考察。

中古 Mark levinson No.20.6Lの修理整備レストア

マークレビンソン No.20.6Lのフルレストア交換部品400ケ

ようやくレビンソンNo.20.6Lのレストア技術担当マターの動作チェックと計測が終わりました。これから試聴ルームで1週間~2週間各スピーカーやプリアンプでテストを行います。レストア技術者目線からNo.20.6Lを可能な限りわかりやすく解き明かしたいと思います。


ハイエンドアンプ レストア技術者の目線

Marklevinson No.20.6Lは素晴らしいパワーアンプであることは間違いない。
回路や部品選定から当時の設計者の「怒り」や執念をふつふつと感じる内容だそうだ。

たとえばオーディオボードに使われているVISHAY-DALE社の抵抗は戦闘機にも使用されたグレード。これらのパーツを現在計っても数値がズレたものがない(生産ロットで異なるかもしれない)。同時代や現代ハイエンドで評判が良い機種の回路や部品をみると、実は大した事がない物はザラにある。
要は音、ではあるけれども雑誌やショップで瞬間的に評価が良かろうと、その音は長続きしない事もある。レーシングカーと同じ。グッドバランスが長続きしない理由は部品の精度(グレード)とその力量を超えた設計、整備の力量(コスト)次第であるため。No.20.6Lは負荷がかかる部分の部品精度がおそろしく高く、コスト制限をなくしたものと考えられる。リファレンスシリーズという位置づけもあったかもしれないし、当時JEFFやKRELLなどのフラッグシップ・パワーアンプが台頭して来たからとも考えられる。

毎日聴いていると劣化はわからない。その内、壊れて修理すると、一部の部品だけが新しくなりアライメントは崩れるが、新鮮に錯覚し、その内また壊れ、また一部の部品が変わっていく。その内、本来のサウンドではない音で鳴るが、それはしょうがないとも言える。当然、修理とは壊れた部分を治し修める事が修理であり、オーバーホールやレストアとはちがう領域。
パワーアンプの平滑コンデンサーはオリジナルであろうと長時間のうちに確実に劣化し、回路図の数値から劣化てしいく。同様に基板のハンダも劣化する。稼働時に絶えず電圧制御する部品の精度も落ちていく。当然音は設計回路図から離れていく。イコール、オリジナルではなくなる。趣味の世界なのでそれでも良いと思う方が幸せ!(一般の方にはオーバーホールはおすすめしていません)。

IMG_0433

ML2LからNo.20.6Lの考察

No.20.6Lの元祖マークレビンソンのML-2L(回路はNo.20.6Lとは大きく異なる)は、当時のパワーアンプとしては図抜けた理想的な動作原理(過去のOHログに数値掲載)を追究し、個人の才覚とヒアリングで完成した名機。一方、No.20.6Lはコスト度外視でブランドを守り続ける執念を感じる物量と回路。ML-2Lは1個の出力トランジスタに27Vの低電圧で50Aを流したパワーアンプ。実パワーは8Ω負荷で37~38W(過去に計測したOH4台)。25Wではない。37Wを超えた時点から波形が乱れる。ML2Lの回路設計は3度変わっていると考えられる。初期と後期ではガラッと変わる。ML2Lの初期型の部品点数は少なく、音質傾向のちがいはEIトランスやトロイダルトランスといった一部の部品の差異だけではない。

No.20.6Lは実質ML2Lの4倍以上の出力を確保するために、出力トランジスタ搭載数を2倍にし、複雑な回路でさらに部品精度とを上げたアンプ。No.20.6の実パワーは8Ω負荷時133W。消費電力は500WなのでML2lと比較するとひじょうに効率が高い設計となった。その分部品点数はおそらく2倍程だろうか。保護回路は充実している。基本回路や部品はNo.20.5Lと同一でオーディオボードの基板素材だけが異なる。

ML2LとNo.20.6Lのサウンドの違いは明快で設計者のコンセプトの違いや時代が音にも出ている。1点だけ述べると、ハーモニックなHiのエネルギー度(位相)と全帯域密度感(実駆動力)が重要なちがい。出力素子や回路の違いが大きい。

技術担当はこのNo.20.6Lを3度バラし組み上げる作業をし、全てのハンダ箇所を裏打ちしいる(オリジナル・ハンダは活かす)。約45cm四方の塊の中で500Wの熱が常時放出されるためハンダ劣化が激しく部品劣化も相応にある。当時の代理店の方には、アドバイスも頂きつつもレストアは辞めた方がいいと進言を受けました。さらに世界で初めての試み。現在入手不可の劣化部品は世界中から探す。輸入したパーツは1,000個程(基本的には当時の部品メーカーと同一で各部でグレード上げたもの)。トランジスタはモトローララインで生産された同一ロットからの選定品(仮想負荷をかけて数値計測したペア)。

No.20.6Lのオーバーホール時間は延べ500時間はかかっているだろう。数時間聴いて、ポエムを思い浮かべる事とはまるで次元がちがう。劣化したオリジナル部品でお茶を濁す妥協はしない。突き抜けたサウンドは妥協を排した徹底した整備作業と部品選定眼、創造性からしか生まれる事はない。過去にハイエンド・ブランドを起こした若者達と同じ様に。

No.20.6Lの交換部品400ケ

No.20.6Lの交換部品400ケ(実質500ケ)

IMG_0419

今回は400(約500ケ)個あまりの部品を交換。左右CHのバイアス・バランスはシビアに合わせ、0.000%オーダーレベルまで合わせた世界TOPのNo.20.6Lペアになっていると期待しています!


2017.6.16

2週間近くの動作チェックが終わりました。途中LEDランプの交換等がありましたが概ね良好です。150-4Cのドライブ力は図抜けた感じでスピーカーが一回り程大きくなったような感覚。面の音圧も1歩、2歩前…….そして、静か。なので、薄気味悪い程音像が屹立する様は異様。。。

業務用エアコン温度設定は22度。

Mark levinson No.20.6L

Mark levinson No.20.6L