cello AUDIO SUITE
FM ACOUSTICS FM255、FM245、
Mark Levinson、KRELL、CounterPoint、
Jeff Rowland.D.G プリアンプのINDEX。
USEDハイエンドプリアンプが7,8台あるので一斉レビューです。
1980年代から1990年代、2000年代のプリアンプ達。【更新】
プリアンプとは何ぞや…….という初歩問答
プリアンプ=コントロールアンプと言いますが、言葉通りでそのシステムの頭脳にあたる機器。
やたら視力が良くても、見えた対象を察知するには、その対象が何であるか?それはどの程度の脅威であるか?という事が一瞬にしてわかり、逃げる!あるいは戦闘モードに入るという、一連の判断が伴います。瞳から脳への微弱電流が走るそうです。人間においては、何かを見て誰かに伝える時も同様で視覚を言語へ変換し、さらに表現します。
頭の悪い?チーターだと広大な草原では生きていくのがタイヘン……人は能力を代替えするそれなりのシステムを造り上げましたね。
さて、ファイル音源やCDプレーヤーなど上流機の微弱信号をパワーアンプへ送る(パワーアンプをドライブする)役割がプリアンプ。理想は「ストレートワイヤー」らしいのですが、現代のテクノロジーでは困難です。部品点数を少なくすると逆の部品の個性が出てきたりします。
大袈裟ですがプリアンプの選択次第でシステム全体の音楽能力(表現力)が左右されると言えます。プリアンプを設計した人やメーカー、国、体制など。各プリアンプの入出力ゲインによる考え方のちがい、回路や部品などによるアプローチ・ファクターがスゴくあるのがプリアンプ。ココが頭脳なので他が良くてもここがプアだと予想外に貧弱になったり抑揚がなかったり、何でも一辺倒なトーンだったりします。
要はとっても大事。というコトです。
この大事な機器をどう選ぶか?
では、どうやってこの大事なプリアンプを自分のシステム、自分が考えるシステムの中にフィットさせていくか?というところですが、アナログを聴かれる場合はフォノイコライザーとの絡みもあります。
まずは聴かない事にははじまりませんが、聴かなくても選ぶことは可能です。
それは”激しい思い込みと作り手への憧憬、デザイン”。オーディオに限らずイイモノは顔に出るのでその匂いを感ずる!ネットや雑誌などのレビュー情報から紡ぎだすおぼろげなサウンドイメージ、妄想…………脳内プレイもプリアンプを選ぶ楽しさの一つです。何でも自分のシステムで聴けるわけではありません。もし、まちがえたなら、また選ぶ楽しみができたという事として含み憶するのです。
所有ソースでどの盤が、どのトラックが、NEUMANN のヴィンテージマイクで録られたかわかりますか?
Audio Dripperで2回以上のリピーター様の場合は比較したいプリアンプ2台を1週間お貸出します。
一般的にUSEDプリアンプを試聴する場合は店頭で判断をする事が多くなります。”信用できるのは経験とソース” でしょうか。複数のプリアンプを店頭で繋ぎ替え比較できたとしても、そのプリアンプの本気モードが聴けるわけではなく、あくまで、指標の一つでしかありません。
その指標に役立つのはいろんなシステムで聴いた事がある自分の好きな音源。
できれば10年以上聴きこんでいる3枚。1枚は編成の大きいシンフォニーなど。2枚目はトリオ~クァルテット編成などの盤、3枚目がボーカルソース。シンフォニーは大人数での和音のながれや立体感、ステージ感などあらゆるパラメータが入っています。できればこれらの収録されたホールなりスタジオ、マイク&マイクセッティング、ミキシング&マスタリングの構成などがわかれば尚いいです。
たとえばプリアンプを選ぶ際にNEUMANNのヴィンテージマイクがわからないプリアンプは音楽的な分解能が不足しているという事(ここはハードではなく!)。マイクの種類まで想像できるプリアンプは制作された国や時代などもなんとなしにわかります。国や時代性がわかるという事はその音楽(芸術)が生まれた背景が伝わるという事です。音楽はその時代の空気感や時代から生まれます。その時代を生きる音楽家やミュージシャンが、自らの立ち位置から表現するからです。
プリアンプの役割とは音楽家や制作した人々の技術を時空を超えて、あなたの目の前におとぎ話の様に語り、奏でかけてくる翻訳機とも言えます。上流機はあくまで正確にピックアップする機械です(とは言え、ここにも色がありますが・・)。
以前ある著名なレコード会社で大物アーティストのポスプロをやっているお客様が試聴用で持参した著名なボーカリストのベスト盤のマイクやスタジオの違いを全トラック当てた事があります。ある程度の音楽力が備わったプリアンプを介すと簡単にわかります。
現在、ECMレーベルのメインエンジニアは複数のヴィンテージマイクを最先端のマイクプリA/D・D/A、HDを開発しながら使用しています。 マイクにはコンデンサー型やダイナミック型、真空管マイクなど多数あり、そのマイクを選ぶにはワケがあるので、そのワケを表現から紐解く事で音楽の核心に近づく一歩となります。オーディオはそういう積み重ねかもしれません。Jポップやロックはかなり加工されたものが多いので良いプリはその機械の癖まで出るはずです。YAMAHAのミキサーなんじゃないかな?というところまで。
良いプリアンプは音楽は当然、音楽ポストプロダクションに至るまで露わにする事になります。その中で自分の指向性と聴く音楽のジャンル、自分のシステム、予算などを天秤にかけて、えいや!と決めます。
そのプリアンプが壊れた際に修理しやすいかというのも重要です。
海外製の場合、メーカーがなくなったり代理店が扱わなくなる事もあります。数百万円で購入したものが5年程でNGとなってはいけません!2020年以降かなり変わっていくはずです。その機器がどのような基板でどのようなパーツで構成されているかは極めて重要です。最新のハイエンド機をながく使用するために購入する場合、どのような部品から成り立っているかは調べてください。
■Jeff Rowland.D.G Coherence 2(Up grade)プリアンプ 定価¥2,484,000. 外観:A 動作保証:6ヵ月 代理店チェック整備&バッテリー新品【ご成約ありがとうございました】
最近、代理店整備から戻ってきました、Jeff Rowland.D.Gコヒレンス・シリーズ2(UPグレード)。直近1年半3台扱っていたのですが、個人的な趣味からあまり良いイメージをもっていませんでした。まずはサウンド面からですとハイに特有の癖を感じた事があったためです。「癖」が悪いわけではありません。どんなプリアンプにも個性(癖)があるからです。その個性が自分の好みの範囲にあるか否かだけです。
このコヒレンス2UPグレード版になると、気になる個性が相当薄まります。薄まるからと言ってサウンド全体のトーンが好きか?と言えば正直….そう好きではありません。コンテンポラリーJAZZをメインに聴きながら、この30年来聴き続けているクラシック盤も数十枚あります(少ないですが)。
コヒレンスで聴くジャズはシンバル帯域の厚み、濃厚さが若干不足して感じます。ハイのテンションも僅かに低い”気”がします。裏を返せば、この帯域にキャラクターを”盛って”いるプリアンプも多数あります。コヒレンスの場合、シリーズ2を含め、ミネラル分たっぷりな蒸留水的な味わい。炭酸やカフェインはなし!この個性にハマる音楽ジャンルは実は多いのです。クラシック全般、女性ボーカル全般、ミニマル系、アンビエント系、エレクトリカ系、ECM系かなりのジャンルが範囲です。アフリカ系アメリカ人の音楽以外はすべて範囲かもしれません。この”血”の特質だけは避けられないのかもしれません。
この時代のJeff Rowlandはまだ比較的温度感がありヒューマンなサウンド。もしかすると、こういうキャラクターも気のせいかもしれません。同じブランドでもその時代によってサウンドのトーン&マナーは変化します。もちろん音楽も。デビュー当時のジェフ・ローランドの豊かなアメリカをほんのり感じさせるサウンド。
Jeff Rowland.D.G CoherenceⅡの動作安定性はとても高いです。さらにJeff Rowland.D.Gに限りませんが、代理店:太陽インターナショナルのサポート体制は素晴らしいものがあります。
■Mark Levinson ML1【お客さま預かり品】
Mark Levinson ML1、JC2同様のJohn Curl設計の初期レビソンプリアンプ。回路的には変わっています。こちらは1年程前に販売した個体で今回整備入荷のML1。モジュールに問題が見つかり整備を行いました。ML1はシンプルな回路で若き日のレビソン・サウンドが体験できるプリアンプです。パワーサプライはPLS150でEIコアモデルです。たしかPL153Lからトロイダルとなっていきます。その昔ナイフのエッジを思わせるような鋭いサウンド云々などの尖った形容を見聞きしましたが、今ではそこまで尖っている感じではなく、相対的に”いい塩梅”になったのではないかと思います。
その昔SS誌でML1はゲイン調整でLNP2Lにかなり近くなる設定があると評論家の故井上卓也氏が書かれていました。一方JC2は扱い方を間違えると厳しいサウンドになる事もあるかもしれませんが、より鋭敏なプリという側面があり人気があります。
■Counter Point SA5000 定価¥1,080,000. PHNO対応コントロールプリアンプ 外観:++A【ご成約ありがとうございました】
カウンターポイントはSA5からトランジスタ&真空管ハイブリッドアンプとして人気がありました。設計者のマイケル・エリオットの好みが反映されたもの。SA5000はカウンターポイントのフラグシップ・プリアンプで最終モデルに近いバージョンです。デザインがアメリカンなタッチなので豪快なサウンドを想像しますが、カウンターポイント=対位法というネーミングからイメージするのはクラシック音楽。ハイの繊細さや艶やかさは弦楽器や女性ボーカルを聴くといいだろうな、と思わせるサウンド。激しいダークなサウンドには他にもいいプリアンプがありそうです。
こちらの個体はフォノステージ。ラインステージ、FETオフセット調整、劣化コンデンサーを交換した個体。元箱も付属しています。
■FM ACOUSTICS FM255 コントロールアンプ 正規品 定価¥3,850,000. 動作保証6か月【ご成約 ありがとうございました】
Fm Acoustics FM255です。音楽を積極的にドライブするプリアンプの最右翼。独特な音色がのり、音楽のノリも印象的なプリアンプ。Fm Acousticsの代表的な音作りのソースと言われる音源はクラシック音楽らしいのですが、JAZZやロック、ボーカルソースでも充分にFm Acousticsの魅力が発揮されれます。特にJAZZのシンバル帯域のシズル感はFM255の個性の一つでリズム乗りや叩き分けな魅力的。現行機種は700万円を超えう価格帯となります。こちらの個体も過去にモジュール整備済みとなります。ケーブルはすべてFM ACOUSTICS純正品で試聴。
■cello AUDIO SUITE & cello AUDIO PALETTE初期&cello MASTER SUPPLY (1台) RFエンタープライゼス 定価¥8,272,800.(税込) 整備込み・動作保証1年【ご成約ありがとうございました】
ヴィンテージハイエンドの最高峰(部品や回路など)のcello AUDIO SUITE &cello AUDIO PALETTE。サウンドはいたって『普通』です。ですが、これから他のプリアンプへ変更すると何かしらのモノ足りなさを感じるかもしれません。USEDですのでその価格にはその機器の元値(定価)と実力が反映されます。cello audio suiteに関しては国内は元より世界の市場でもでてこないレア物。今回はセット販売ですが御了承ください^^;; サウンドはレビンソン系プリアンプではこれ以上はありません。現代ハイエンドプリアンプの中にあっても音楽力ある表現を聴かせてくれるプリであろうことは想像できます。分かりやすい個性やキャラクターがない本物のヴィンテージ・ハイエンド・プリアンプ。
■FM ACOUSTICS FM245 AXISS 定価¥4,250,000. 正規品【ご成約ありがとうございました】
FM ACOUSTICSのエントリーモデルのFM245【2007~】 鳴りっぷりのいいコントロールアンプ。FM ACOUSTICSのプリアンプの中では弟分的存在か。フットワークの速さが印象的。乱暴な分け方だけどこのプリアンプの中ではJAZZやロックなどとの相性がいいサウンド。今回はFM255やcello AUDIO SUITEなどもあったためサウンドの”若さ”がプラスとなった印象でもあります。逆を言えば陰翳がなく深みが足りないとも言えます。とは言え、通常プリアンプにはない躍動感はオッと感じる部分。このモデルは2007年以降にリファインされたFM245です。
FM ACOUSTICS FM245の詳細ページ⇒
■Linn klimax kontrol 正規品 2018年代理店チェック・修理済 定価 ¥1,700,000.【ご成約ありがとうございました】
イギリスらしいハイエンドモデルがLinn klimax kontrol。アルミ削り出しの小さなサイズですが、その存在感はデザインの秀逸性からくるものだと思います。サウンドはカタチを表すようなイメージ。いつもどんな時でも上質なサウンドで音楽が部屋に満ちる目的なら迷わずLinn klimax kontrol がおすすめ。もちろんスピーカーの頂点で音楽とシリアスに向き合う時も音楽の内面を垣間見せてくれるプリアンプです。パワーアンプはLINNにこだわらなくても大丈夫です。
■Mark Levinson No.26SL(BAL) 正規品 定価¥1,897,000. 動作保証:1年 外観:A【ご成約ありがとうございました】
Mark Levinson No.26SLは10年以上に渡り販売されたNo.26Lの最終版です。まず26Lについてですが、ML7Lに近い考え方で造られたプリアンプで基本コンセプトはMark Levinson氏が考え回路設計はTom Colangelo氏。モジュール化はされていません。電源部は別ユニットとなります。No.26LのサウンドはMark Levinsonアンプの中でも温度感が高いモデル。No.26SLモデルはテフロン基板を採用したモデル。分解能もよくソノリティ良さが通常モデルとの差でしょうか。
日本国内においてマークレビンソンのプリアンプの中で一番販売台数があったプリアンプがNo.26シリーズではないかと思います。時代背景もあるかもしがやはり魅力は「サウンド」かと思います。今では分解能や情報量という面では最新のプリアンプに引けをとるかもしれませんが、音楽全体、サウンド全体のまとめ方が巧いコントロールアンプです。音づくりの上手さが光るプリアンプ。左右ゲインでも音楽のテンションをコントロールできます。このNo.26SL個体はバランス入力ボードが付属します。ゲインVRの分解OHや左右CHオフセット、全体チェックをした個体です。ちなみに将来的にテフロン基板がNGとなった際にも修正整備も可能です。
NEXT…..
【レビュー・セット】
Audio Dripper COO 清田亮一