重症なオーディオファイルの
プリアンプの選び方、遊び方。
アナログレコードやネットワークプレーヤーなどを
視聴覚系とすると、オーディオシステムの頭脳、指揮系統と言えるのは、
プリアンプ・コントロールアンプになります。
序にパワーアンプは筋肉? スピーカーは身体手脚??
プリアンプは単にボリュームを可変するものじゃなく、
音楽それ自身を増幅するAMPLIFIER
プリアンプの設計で重要視される、チャンネルセパレーション。
そうなら、ステレオプリアンプをモノラルで使うとどう違うんだろう?
そもそも、プリアンプの役割とは?
CDプレーヤーが登場した数年後、今から30年程前からゲインが足りている音源においてプリアンプは不要だろうという考え方がでてきました。アナログレコードは超微弱な電流なのでフォノイコライザやトンランスという増幅系機器や道具、そしてノウハウが必須でした。
CDプレーヤーになって、僕もパッシブなフェーダーが流行ったので、英国P&G製やカウンターポイントSA121st、cello エチュード、他にはヴィンテージの固定抵抗切替式のアッテネーターなどを使用したりしました。が、いずれも長続きしませんでした。
その理由を考えると”味気なさ”に尽きました(かなり私的な印象)。フェーダー(パッシブ)が扱う信号は、絞る前の出力自体が大きいハイ・インピーダンスな信号と言えるので、外来環境ノイズやケーブルなど電気抵抗の影響を受けやすくなります(cello ENCORE 1MΩはこの辺りにフォーカスしました。受け間口を広くしノイズに強い回路です)。
とは言え、良く出来たロータリー式アッテネーターの斬れ味がNGなわけではありません。
プリアンプは”コンプ感”とサウンドステージの広がり
プリアンプ(アクティブ)は増幅回路の増減で音量を調整します。そのためにプリアンプ内部では左・右/±独立で信号を扱います。昨今ではアルミ塊で左右CHが相互干渉させないプリアンプもあります。パッシブのように可変抵抗で絞るだけではありません。
かなり単純に書きますが、よく出来たアクティブ回路を通した時に感じる”コンプ感”がプリアンプにとって実は重要なのではないかと思います。スタジオ機器でも『コンプレッション』はとても重要で、UREIやNEVEなどはソフトウェアにもなっていて、音楽の魅力そのものに直結してきます。
良いアナログ・コンプレッションでは主題やソロ楽器、ボーカルが背景から浮かび上がり、しっかりした密度感や温度感が魅力です。音の密度はコンプレッションされ音楽全体のソノリティとともにリアリティが高まる作用があります。逆にダサいものも多数あります。プリアンプの増幅とは単純にボリュームの増減ではないという事です。
プリアンプの、増減のホントの意味。
ポエムな説明ですが(笑)、音楽信号を正確に、理路整然と増減できる回路をもったプリアンプはさらに精緻に信号を識別しパワーアンプへ送ることで、空間情報やエア感、サウンドステージ・イメージの正確性が上がります。また陰翳感などにもつながります。これがICだとどうなるか?スマホ兼用のチップになるとどうか…..?
また大編成な音楽やダイナミズムの大きい音楽信号はプリアンプの実質的な実力が出ます。勝手知ったるボーカルソースなどは音色や先述のコンプ感を聴き分けることに繋がります。サウンドステージなどの立体感がすぐ感じられるプリアンプは微弱信号を正確に再現できてるんだと思います。
プリアンプは音楽家や制作者の意図を増減したり紐解く機器。
例えば、ボーカル曲なら歌詞の意味やサビに合わせ、歌手は感情をのせます。当然その音源をディレクションするディレクターとも共有し、彼はマスタリングエンジニアにも音楽の意味を伝え、曲のハイライトを造ったりします。
即興で進行するJAZZの空気のグルーヴ感なども自然発生的あるいはコンポジションとしても同様です。クラシックのシンフォニーなら指揮者がディレクターの役割を担います。そこには解釈をもたせることになります。そうした【情報】を増減あるいは紐解くための機械がシステムの司令塔でもあるプリアンプの役割です。
いいプリアンプの条件の音楽性や音楽力とは、こういう事かと思います。これまで扱ったプリアンプを俯瞰すると音楽力があるプリアンプなのかは浮かび上がってきます。もちろん浮かび上がる十人十色なんだと思います。
本題はここまで後はたまたまレビンソンのプリアンプが揃ったので実験したということです。効果の幅はプリアンプの設計思想で変わってきますが、どのブランドのプリアンプでもいいと思います。
好きなプリアンプの音をもっと深化真価させるために
もし好きなプリアンプがあってサウンドも気に入ってたとします。そこへ少しの変化、もしくは大きな深化を望むならケーブルを変えることもあるでしょう。設置するラックを良くすることもありでしょう。それで音が良くなったと喜ぶ事も一興。
そうしたアクセサリーによる外部要因も重要ですが、いっそのこと同じプリアンプをもう1台手に入れて、モノラルプリアンプ化することは、設計者の思想を理想形にした完全セパレート&シンメトリーな構造もったプリアンプになります。微弱信号を扱うプリアンプにとって、筐体からモノラル化できるので大きなアドバンテージになります。抜本的な答えに近くなります。
さらにやるなら内部部品の特性をすべて揃えたパーツ、0.000%オーダーまで特性を揃えた世界は外部アクセサリーで調整する以上に音楽の核心へと近づきます。内部が駄目なものをそのままではそれ以上の世界がないという単純明快なことです。
かつてのウエスタンエレクトリックやTELEFUNKEN、クラングフィルム、スタジオ用のヴィンテージプリアンプは全てモノラルでした。ヴィンテージ・ハイエンドではMark Levinson ML6やKRELL KRS1などは電源部やボリュームなどすべて完全モノラルコンストラクションプリアンプでした。
昨今のプリアンプではVIOLA SOLOも完全モノラルプリアンプです。LINN KLIMAX KONTROLなどもモノラル化する事で密度感やエネルギー度が増します。スタジオ用のcello AUDIO SUITEのP301アウトプットモジュールのダブル化も同様に効果があります。
MLAS Mark Levinson PRE AMPLIFIERのモノラル化
マークレビンソンにはかつてML6という完全モノラルのPHONOとLINEの2系統入力のみのプリアンプがありました。ステレオプリアンプのJC2(ML1)をモノラル化したものですが、サウンドの充実度はコストなりの効果がありました。
サウンドの「噴出力」は只者ではなくエナジー度や音の密度で言えば、過去に入荷したFM Acousticsプリアンプ以上でした(こう書くと単純に解釈しがちですが、指標はいくつもあるので気にされないように)。
内容同じステレオパワーアンプとモノラルパワーの違いと近い事がプリアンプのモノラル化にも言えるのかもしれません。
ML6Lは現代ハイエンドとは方向性はちがいますが、彫り込み度合いの深い音像&音場も、電源ユニットまで完全モノラル化されたプリアンプならではのもので、一般的なステレオプリアンプとは一線を画します。cello AUDIO SUITEのP301ダブルといい勝負(密度感)するのがML6だと思います。
以前から行っているLINN KLIMAX KONTROL dps.ver.up機のモノ化はAudio Dripperでは定番になっています^^
ML6元、JC2(ML1L)はどうか?これもML6と似た傾向のサウンドになります!じつはとてもコスパがいいと思えるサウンド。バイアンプもイケるタイプですが、モノラル化した時のセパレーションの良さじはちょっとイイです。。左右で電気的干渉がまったくないものでセパレート化された電源も贅沢に片CHで使えます。
プリアンプの電源
特にヴィンテージハイエンド機を多数扱っていると感じるのは70、80年代のプリアンプは電源部が重要だということです。A級動作のプリアンプも多数あるように電源の充実度はサウンドにモロに効いてきます。cello ENCORE 1MΩとcello AUDIO SUITEでは使用しているパーツに大きな差はありません。決定的にちがうのは電源部となります。これが音の余裕度や深み、厚みのちがいとなります(キャラクターのちがいかもしれませんが・・・)。例えばcello ENCORE 1MΩプリアンプの電源部のトランスを2個搭載し、ブロックコンデンサも2倍の容量を持たせ、電圧の安定化を徹底すれば…..など想像すると面白いです。
モノラル化する事で一番効果があるのは電源部とボリューム、アースまわりなのかなと思います。
Mark Levinson ML7Lのモノラル使い
今回とても良かったのがML1LやML7Lのモノ使いでした。2連独立型のボリュームなんですがやはり完全セパレート化で化けました^^。微弱な音楽信号を扱うプリアンプの筐体モノラル使いは効果があります。特にサウンドステージなどの領域の超微弱な信号にもメリットがあるのは言うまでもありません。
音楽ソースにもよりますが、モノラルパワーアンプと一緒で左右の音楽信号が完全セパレートになるので、一緒になった時にホログラフィックに力強い音像が浮かびます。そもそも通常モノ化のプリアンプを聴いてもわ2台鳴らしていることがわからないと思います。
じつは今回実験したML1Lのシリアル番号2千番ほどちがい、しかも内部基板仕様(前期・後期)が異なるものでしたが、言われるまでわからないと思います。
プリアンプのモノ化は1CH分を遊ばせているので1か月に1度程度入れ替えて使用されるとよいかもしれません。
相互干渉が少ない構造のML1LやML7Lでも相応の効果(アップグレード)があるので、一般的なステレオプリアンプではもっと効果があるかもしれません。
今回の実験で使用したLEMO⇔XLR端子ケーブルです。せっかくの音楽信号をアタッチメントで劣化させないケーブルとなります。
もしかすると、ML6Lが入荷するかもです!
Audio Dripperのユーザー様でレビンソンマニアの方がもしかしたら手放されるかもしれません。