Dan D’Agostinoがつくった
クレルデジタル社の90年代フラグシップ機、
KRELL SBP-64X DACの
オーバーホール整備とエージング。
Dan D’Agostinoがクレルデジタル社を興し、米軍暗号技術者(予測変換)や
デジタル技術者をヘッドハントし開発したDAコンバーターがKRELL SBP-64X。
KRELL SBP-64X DAコンバーターの整備
下記はKRELL SBP-64Xの電源部の写真ですがブロックコンデンサはcelloプリアンプなどに
よく搭載されるサイズのコンデンサですね。やはり容量抜けしてましたので交換です。
入荷した時のサウンドは抜けとダイナミズムと分解能、
ハイとローの輪郭がぼんやりしたサウンドでした。
へたったサウンドでも甦るといい音がする予感がありました。
それは使用されているBurr-Brown製DACチップと充実した電源部からです!
上の写真は電源ユニットのメイン基板です。ブロックコンデンサ以外にも、
以前の修理で交換されていた日本製パーツも変更。
電源部のトランジスタの増幅率が悪かったので多数仕入れした中から最適なものを選択。
モトローラ社のトランジスタとなります。
測定は信頼性が高いatlas DCA Proを使用し20個以上のトランジスタから3つを選びました。
サウンドはオーバーホール直後にMSB DACと試聴した時点とのレビュー時に比較して
かなり情報量や分解能がアップしたと思います。エージングが進みクレルらしいサウンドで、
贅沢なパーツが活きてきた充実のサウンドかなと思います。
特に大編成の交響楽シンフォニーのうねるようなスケール感はかなり迫真的で
スケール感やダイナミズムに凄いものがあります。
簡易に言うと大出力時に一気に必要な電流を淀みなく流せるような感じです。
微細な信号でも細やかに送れる感じでしょうか。
分解能的な視点からもエージングが進み音のグラデーションが
丁寧に表現されている実感がありますね。
内部コンストラクションやオーバーホール整備した個体としてはバリューコストな1台かと思います^^
美しいKRELL MD1 やバークレイCDトランスポートがありましたらぜひ買い取りさせてください!
ハイエンドオーディオ機の発熱について
KRELL SBP-64X DACに限らず、ハイエンドオーディオ機の発熱は充分に気を付けてください。
どういう状態で使用されているかで、だいたいその方の機器への愛情やスキル、
機器の状態、音まで想像できます。
機器の内部レイアウトや消費電力、発熱状況から最適な温度環境を与えてください。
例えばこのKRELL SBP-64Xは本体に熱源になる部品がほぼないことがわかります。
よって比較的部品劣化が少ないと予想できます。ただしフィルムコンデンサの近くに
小型トランジスタがあるので注意が必要です。
celloやMark Levinsonなどの別電源プリアンプは内部にトランジスタがあり、
放熱効果が少ないのでコンデンサ類はだいたいNGになっています。これらはA級回路ですね
酷いのは基板まで漏れている個体もあります。液漏れして基板を駄目にすると御終いです。
同一機種でも発熱対策や放熱不足からマイナーチェンジ時に対策している機器は多数あります。
昔のGASのようにある程度の発熱状態を保って安定動作する機器もありますが、
部品劣化が激しいので動作不安定になるケースが多くありました。
電源部は発熱の宝庫でメタルトランジスタや小型トランジスタなどが発熱します。
なので部品劣化が激しいです。Audio Dripperでは静音ファンを
上向きにして設置しエージングしています。小さなA級アンプのようなものです。
これらのA級プリアンプやDAC、発熱(局所的も含む)の大きな機器を
絶対にラック内に押し込めないでください。本体上部から20㎝以上空間があっても熱は対流します。
徐々に機器の劣化を早めます。モノによっては数年でNGになってもおかしくありません。
メーカーは6年ほどしか部品確保しない場合もあります。
LINNのラックには電源を入れる機器には黒いファンで送風しています。
ちなみにエアコンはこの真上に設置しています。
ラック内には想像以上に熱が対流しているので、高価なケーブルよりも冷却ファンは必須です。
LINN IKEMI CDプレーヤーもこの状態だと筐体全体がかなり高温になりますので
横から冷却ファンを当てます。
KRELL SBP-64X の電源部の上部は30㎝程ありますが、気温23度でも
かなりの発熱があるので12㎝口径のパソコン用USBファンを常設しています。
年間100台以上の機器をオーバーホールしていますが、
多くのハイエンド機は乾燥した北米やヨーロッパのような気候では問題はありませんが、
日本のように亜熱帯高温多湿の環境では部品の消耗が早くなります。
エアコンを使っていても局所的な発熱は免れませんので要注意です。
こうした機器を保護する意図も小さな「センス」と言えるかもしれませんね。