新日本フィルハーモニー交響楽団の若きリーダー、
西江辰郎コンサートマスターの
リファレンスSTUDER A730レストア。
はじめは筋がね入りのオーディオオタクかと。
けっして綺麗とは言えないSTUDER A730がテーブルに置かれた。そしてこのプレーヤーの音が気に入っていると。しかしよく見ると接続端子などが酸化していたり、CDM3トレイの塗装がヤレていたり、S.N.が初期番台だったりとなかなか難しい状況を孕んだ予感がするSTUDERA730。
そしてご依頼の方と話すと、異様なまでの音への拘り。執着と言ってもいい。そして耳が良い。一流のマスタリングエンジニアを頑固にした雰囲気だろうか。
この方が持参されたSTUDER A730の現状のサウンドはシンバルなどに若干毛羽立ちがあり、トランペットなどの音像が太く密度感が若干落ちた感じ。聴き様によってはまろやか。STUDER A730 は製造から30年を経て2度の修理履歴があり交換部品が20点ほど。消耗パーツはかなりの度合いで劣化しているはず。制御基板に純正ではない部品の取りまわし。総じてでも悪い音ではなかったと思います。
新日本フィルハーモニー交響楽団のコンマス西江辰郎氏のリクエスト。
最初はこのSTUDERA 730の音がレストア整備で変わる事を拒まれました。しかし部品を替えると音が変わります。それがSTUDER純正パーツであったとしても変化します。劣化しているであろうコンデンサー70個近くを新品へと替えた場合、とうぜん新品時に近いフレッシュなサウンドになります。ここで国産パーツへ交換すると音色そのものが変わります。もしかすると音のクオリティはUPするかもしれません。またオペアンプについても精度を追いかけると、サウンドはシビアで厳しい表現になるかもしれません。
『(古く、弱っていても)この音を信頼している』
オーディオマニアの方はこういう事ほとんどおっしゃいません。エンジニアの方もあまりこうは言いません。不思議に感じて、何をされている方ですか?と伺うと、オーケストラのコンマスです、と。
私個人はプライベートでJAZZメインで聴いていたので西江氏のことは知りませんでした(すみません^^:)
その瞬間の音そのものを信じる。
会話の途中で気づいたことは、このSTUDERA730のサウンドが100%か否かベストか否かは、芸術家にとっては本来的には関係がなく、その瞬間に聴く音がすべてだという事。その音から音楽や作曲家の背景を紐解く。ご自分の過去の演奏(CD)を振り返るのかもしれません。
今回のレストアは現状の音色を極力崩さずに、10年以上使用可能な状態にする事。STUDER純正に近似である事。あわよくば、西江辰郎氏が聴きたいであろう音まで引き上げる事です。パーツ選択のパズルはディスカッションする事でかなり明確になります。基本的には純正と欧州製電子パーツがメインとなります。
このSTUDERA730はSN初期番台なのでピックアップが消耗していた場合はレーザーダイオードを新品へ交換する必要があります。一番の課題は発熱対策。
Neumann M269マイクなで録音されたHigh-end サウンド!オクタヴィアレコードのSACD
ミュージシャンだからと言っても最終的なサウンドに責任をもつ方は少ない。ご自身の完成した商品(CD)をいい加減なシステムで聴く環境しか用意していない。スタジオも然り。こうしたCDは僕らが聴くと裸になります。Hip-Hopでも素晴らしい盤があるし、売れていなくても凄い仕事がされたパッケージは多数ある。こだわりがあれば世の中はこんなに酷い音にあふれる事はないでしょう。有名か無名かは関係ありません。安い機材で録音され消費され続けるオンガク…………。
信頼している機械をかなりのコストをかけて蘇らせる。そういう意味では西江辰郎氏は世界の音楽家のなかでも一流であり、こういう道具にもこだわる芸術家の作品は本物です。
・・・そう言えば来店時に遠いパーキングからバイオリンとA730を抱えて来られていました。ちなみに今回頂いたCDには楽器のマイクはもちろん空間成分を録るマイクの銘柄まで記載。さらに楽曲の解釈や録音についても語られています。
音楽家は音を司る神でもあると言えます。世界を提示し多くの人々に情動させる能力。だから音のディテールに妥協した下手な嘘に大人はそう騙されないしそう長続きしない。
西江辰郎氏のCD盤(Amazonリンク)は多数あります。右のAmazonは一部。STUDERA730のオーバーホールご依頼時に頂いた【サン=サーンス:幻想曲、ルニエ:スケルツォ・ファンタジー、ピアソラ:タンゴの歴史、他西江辰郎(Vn)津野田圭(harp)】/オクタヴィアレコード(EXTON)のSACDのサウンドは当レベールの江崎 友淑氏が担当。録音空間には空間音響は日東紡音響の音場アクセサリーが適所に。
Neumannヴィンテージマイクを使用した音源はオーディオチェック用CDとしても。
ヴァイオリンのマイクは1962年登場のヴィンテージマイクNeumann M269。津野田さんのハープにはU87Aiを使用。空間成分には無指向性B&K4003。サウンドは人肌の湿度感、温度感があり、演奏は深い憂いや陰影感を感じさせます。音場感や演者の位置感やエア感を感じる事ができる盤。
今後、STUDER A730は1か月ほどでレストアを行います。西江氏にもお聴き頂きレビューを頂こうと思います。2時間ほどミーティングさせて頂き、サウンドの指向性を多少なりと理解したと思いますので良いレストアができると思います!
2018年12月中旬以降の演奏
12/14 | 新日本フィル サントリーホール 19:00- | ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」op.125 指揮 アントニ・ヴィット ソプラノ 盛田 麻央 アルト 中島 郁子 テノール 大槻 孝志 バリトン 萩原 潤 合唱 栗友会合唱団 合唱指揮 栗山 文昭 |
12/15 | 新日本フィル すみだトリフォニーホール 14:00- | ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」op.125 指揮 アントニ・ヴィット ソプラノ 盛田 麻央 アルト 中島 郁子 テノール 大槻 孝志 バリトン 萩原 潤 合唱 栗友会合唱団 合唱指揮 栗山 文昭 |
12/16 | 新日本フィル オーチャードホール 14:00- | ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」op.125 指揮 アントニ・ヴィット ソプラノ 盛田 麻央 アルト 中島 郁子 テノール 大槻 孝志 バリトン 萩原 潤 合唱 栗友会合唱団 合唱指揮 栗山 文昭 |
12/19 | ||
12/23 | ||
12/27 | 京都市交響楽団 19:00- 京都コンサートホール 大ホール | シェーンベルク:ワルシャワの生き残りop.46 ~語り、男声合唱と管弦楽のための(語り:宮本益光) ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」op.125 指揮:下野竜也 吉原 圭子(ソプラノ) 小林 由佳(メゾソプラノ) 吉田 浩之(テノール) 宮本 益光(バリトン) 京響コーラス |
12/28 | 京都市交響楽団 19:00- 京都コンサートホール 大ホール | シェーンベルク:ワルシャワの生き残りop.46 ~語り、男声合唱と管弦楽のための(語り:宮本益光) ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」op.125 指揮:下野竜也 吉原 圭子(ソプラノ) 小林 由佳(メゾソプラノ) 吉田 浩之(テノール) 宮本 益光(バリトン) 京響コーラス |
Audio Dripper COO 清田亮一