Acoustic Research AR303a マイルス・デヴィスのAR3aの直系

1960年代のBluenoteの『note』をスピーカータイプやサイズを超えて表現するセンス。

AR-3aの直系、Acoustic Research AR303a、

東海岸のレジェンド・ブランド。

AR-3a

Acoustic Research AR-303a

Acoustic Research AR-303aはクラシック音楽やボーカル音源ではとても音楽性があります。Cello時代のMark Levinsonがスピーカーシステムのコアユニットに採用したものとほぼ同じユニットがAR303aに搭載。この手のブックシェルフはJAZZが苦手というがどうなのか?

cello 初代Amati

cello 初代Amati

Miles Davisが創造した新しい表現

かつて、Miles Davisはニューヨークのアパートメントで新しい表現を模索する思索のなかでラヴェルやドビュッシー、ハチャトリアンなどを聴きながらモーダルJAZZの地平を切り拓いていきました。マイルスはチャーリー・パーカーのグループからデビューしたのですが、後にマーカス・ミラーがインタビューしたときに『パーカーのグループではついていくのがやっとだった(苦笑)』と語っていました。

…..本心はそこにあったわけではないのだろうと想像します。コードJAZZは既にパーカーが突き詰めていたので自分の出る幕はないということだったのかもしれません。

パーカーグループ脱退後、モーダルJAZZの先駆者だったジョージ・ラッセルなどとの交流を経てBill EvansをKind of Blueの録音にヘルパーとして抜擢(本当はメインピアニスト)。Kind ob Blueはその後全世界で1千万枚セールし、2017年の今でも毎年35万~50万枚を売る怪物盤でもあります。
1960年代~80年代は音楽のながれのちょっと先で表現をおこなったMiles Davis。その時の相棒が、Acoustic Research AR3a……..、こんかい入荷したAcoustic Research AR303aの先代モデル。

Miles Davis オリジナルプリント

Miles Davis オリジナルプリント

Acoustic Research AR303aのアメリカ東海岸のサウンド

AR303aに搭載されているユニットがCelloの初代Amatiに搭載されているユニットとほぼ同一である事はレアなのですが、それよりもびっくりするのが、1960年代や1970年代のJAZZのダークな表現に長けている事。それはマイルスグループにいたハービー・ハンコックやトニー・ウィリアムス達の1960年代後半のアルバム。アーシーなサウンドとモード特有の浮遊感の表現が浅くならない。特にこの時代のオフッたバスドラの重く乾いた響きはこのサイズのスピーカーでは貴重。アンプはMcIntoshを合わせています。

余談ですが、Mark Levinsonがベースを演奏していた1960年代後半のポール・ブレイのピアノトリオとは相当に相性がいいスピーカーでもあります。

Acoustic Research AR303a

Acoustic Research AR303a

実はJBL4428も在庫していたので聴き比べしましたが、表現の上手さや深さ、そして音楽に薫る黒っぽさはAr303aが断然ありました。ウォーキングベースの爪弾きながらグルーヴ感(推進力)の表現もAr303aが巧い。おそらくJBL4428はHip-Hopなどでは良いのかもしれません。。

AR303a 正直意外な印象。AR303aはお安いのでいちいちこういうテキストを起こしませんが(笑)、音楽力は相当に高いスピーカー。この試聴を行ったのは昨日でANNEX店長と一緒に聴いて二人で驚いたという。。

JBL 4428

JBL 4428

ニューヨークなどのビジネスマンがMcIntoshでARをアパートメントで聴くスタイルはとても流行ったセットです。現在でもアメリカ東海岸では人気があるスピーカー。都会の限られた空間で音楽をさりげなく、豊かに、知的に、艶やかに聴くスピーカーとしてはおすすめ。

Ar303a sp

Acoustic Research AR303a

Acoustic Research AR303aの概要

Acoustic Research AR303aはホーンスピーカーが主流だった時代に人気を博したAR-3aの後継機として、AR伝統の技術と新素材を投入したスピーカー。低域はハイコンプライアンス・エッジの30cmウーファー。コーン紙はフェルト状ペーパーコーン。ボイスコイルはアラミド繊維サスペンションを用いたロング・ストロークタイプ。ミッドレンジは3.8cmドーム型ユニット。このユニットはAR独自のフィルター状ソフトドームでシームレスな中域で核的ユニット。キャビネットはAR伝統のアコースティック・サスペンション方式でかなりの低域再生を実現しています。

Acoustic Research AR303a

Acoustic Research AR303a

クラシック音楽やボーカル音源はJAZZ以上にフィットする事は言うまでもありません。こういったダイレクトラジエター方式でも小型ドライバーに聴き劣らないところはすごいスピーカー。この音楽力と価格のバランスはおかしいのですが、、市場原理もありますので17万8千円(税別)です。

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Acoustic Research AR303aは現代スピーカーの明るさや明晰さ、分解能、立体感など顕視眼的なコンセプトはなく、あくまで音楽の音色や温度感、色彩感、グルーヴ感、浮遊感というような部分を限られた制約の中で詰めていったスピーカー。どこかで醒めているのかもしれませんが、その感覚はとてもわかるのが面白い。


Audio Dripper COO 清田亮一