80年代後半、世界一のデジタル・プロダクト、
USED STUDER A730考察。
STUDER 30th Anniversary
下のチャートは時価総額300兆円を誇るAppleの1980年代プロダクトです。
STUDER A730が登場したのは1988年。
いかにPHILIPS&STUDER社のCDSグループが製造した
デジタルプロダクトが凄かったかがわかると思います。
果たしてmac SE30でクロームが走るかギモン(笑) Youtubeはおそらく観れません….
i-phoneとは想像を絶するほどの性能でした。
古いや新しいだけの時間軸や表層のテクノロジーに、
右往左往していては本質は見えない。それは、オーディオに限らず。
今年STUDER A730(1988年発売)が発売されてちょうど30年たちました。ドライブメカはPHILIPS CDM3&TDA1541。業務機器ということでキュー出しなど様々な機能がありますが、扱うメディアはひじょうにシンプル。PHILIPS CDM3は当然ながらCDオンリーのスイングアームメカ。TDA1541は16bit/44.1kHzフォーマットにしか対応しないCD専用。操作系は別として、信号ピックアップ&処理系統は複雑ではないのです。現在のSACD・CDプレーヤーの弱点はここにあります。ロジックが増え複雑になると処理が遅くなる。そして壊れやすい。他にも部品コストなどいろいろ……..
一方のmac。ちなみに僕がこの時代のmacで使った事があるのは”カラクラ”と呼ばれるClassicやLC3(ピザボックス)、クアドラ900です。当時は凄かったと思いましたが、今ではおそらくネットサーフィンもできないでしょう。WiFiなんか無理っす。HTMLを作りながら音楽を聴き、画像を扱うと100%フリーズします。
STUDER A730は今でも現役でプロの現場に在る事は奇跡です。STUDER A730を買取る場合は約30万円が基準で状態や内容によって前後します。
国内有名スタジオのオーナーさんは自宅プライベートマシンもSTUDERであることも…..4,5台保有のスタジオさまも….PHILIPS LHH2000やSTUDERを4,5台保有されているお客さまも……….
さて、1988年当時の世界のエレクトロニクス&デジタル分野における世界の才能は、宇宙とデジタル機器(映像・音楽)に集まっていたと考えられます。その差がmacとSTUDER A730の差です。現在の才能はオーディオ分野ではなく、GoogleやApple、A.I.開発などに替わっています。逆転した現象はデジタル機器だけではなくハイエンド機全体にも言える事。大多数が求める分野に才能がフローするのは世の常、人の常。ここに面白さがあります。
1980年代後半から90年代、世界のデジタルプロダクトをぶっちぎっていたSTUDER A730&PHILIPS
デジタル機器でありながらプロの現場で現在も生き残っている理由の一つは「人」に尽きます。CDフォーマット黎明期にPHLIPS社がSTUDER社と立ち上げた会社が「CDS」グループ。STUDER A730の開発・製造元。ここに集まった世界の才能、耳の力。音楽を解釈する能力。音楽を奏でる機器を作る人材が世界中から集まった。
それは、現代のGoogleのように……………。
その分野が時代の中でどう在るのか、という事からモノを選ぶとあまり失敗しません。新製品がいい?それは結構。本物もあれば偽物もある、多くは時代に淘汰されるものですが必ず残るプロダクトがあります。その見方はいろいろありますが遊びにおいでになった方にはお教えします(笑)
……30年も経たデジタル機器なので音も悪いのが「STUDER A730」
STUDER A730は30年たちますので、音がワルイのは当たり前。ネットオークションではA730が30万円以上で取引されていますが、Audio Dripperへレストア依頼される約3割がそのネットオークションで購入された方からのものが多いようですが、やっと動いているものがほとんどで、まともに音が鳴っている個体はありません。
30年の時間は過酷です。整備済みという個体もありますが、惜しい事にほとんどが国産パーツへ変わっています。ムリクリ治しているものも多い現状。
STUDER A730やPHILIPS LHH2000のプロ機でよく聞かれる事に「ピックアップは大丈夫ですか?」とあります。現代のものより丈夫です。なにしろ素材や掛けているコストがちがう。CDM0やM1はツァイスのガラスレンズ。半永久にもちます。現代のものでも良いプロダクトは多数あります。
PHILIPSドライブメカは分解整備して使えます。たとえ新品ピックアップでも、製造から20年以上たつと、サーボ基板のコンデンサーは劣化しています。調整をしないと使い物になりません。そもそもCDM3やCDM4も分解整備が可能です。出力値が弱ければ調整しますが、出なければレーザーダイオードを変更する事になります。ICもヨーロッパ市場から見つけられますし、コンデンサーもSTUDER純正が手に入ります。日本で整備されたSTUDERはほとんどが国内製パーツへ変更されています。僕らはそれをSTUDER純正へ変更します。UPグレードの場合はドイツ製コンデンサーへ交換します。PHLIPS LHH2000なども同様です。
下は150程のパーツを交換し、レストア&UPグレード、電源部強化、クロックUPなど経たSTUDER A730です。94万円程です。高いですが、格安です。同一仕様のマシンは大手レコード会社で活躍しています。
機械いじりが好きな方やレコードソースの多い方はアナログプレーヤーがおすすめです。弄る楽しさがあります。ジャケットの質感やアート性などもたまりません!気軽にハイクオリティな音源がどこででも楽しみたいならデジタルファイルがおすすめ。好きな音楽をスマホで聴く事は幸せ!
STUDERは音楽を作る人々と同じ道具で音楽を聴く、という位置づけでしょうか。
どんなソースも楽しみ方は人其々でいずれも趣味性やヒエラルキーや深度は同じで、そこに何を見いだせるかも人其々。
2022年1月8日在庫~
■STUDER A730 s.n. 3千5百番台~(マイナーチェンジ以降モデル) 定価¥1,166,400. オーバーホール整備2022年1月 販売価格¥748,000. 外観:A 動作保証:6か月 フラットスタンド付
STUDER A730のメーカー対策済みの個体です。ドライブメカはアルミダイカストフレームのPHILIPS CDM3スイングアームメカ搭載。サウンドはSTUDER A730らしい濃い!音に仕上がってます。消耗しきった電源部のコンデンサやレギュレータ、メイン基板のコンデンサ、トランジスタ、制御基板の劣化部品、各パートの信号をやりとりするフラットケーブル端子も新品にしました。
端子類なども研磨、再組上げしています。
PHILIPS CDM3(過去交換済)のレーザーダイオード出力値も規定値で消耗していません。
筐体&フィリップスCDM3回転軸が水平になるフラットスタンド付属(スタジオ等でのコンソールマウントと同じです)
STUDER A730は製造番号3千番台半ばからメーカーで発熱対策がされました。
付属品:本体、フラットスタンド、ACケーブル、交換済部品
過去2年あつかったSTUDER A730は60台以上になります。
■STUDER A730 カタログ抜粋
型式 | CDプレイヤー |
チャンネル数 | 2チャンネル |
周波数特性 | 20Hz〜20kHz ±0.1dB |
高調波歪率 | 0.006%(20Hz〜20kHz) |
SN比 | 106dB(IEC 179A weighted) 100dB(20Hz〜20kHz、linear) |
チャンネルセパレーション | 90dB(10kHz) |
出力レベル | 固定出力:2.5V/500Ω以下 可変出力:0〜2.5V/500Ω以下 ライン出力:15dBm/600Ω ヘッドホン出力:4.5V/50Ω |
チャンネルバランス | 0.2dB以下 |
フェーズリニアリティ | ±1.0゜(measured over line-out、incl.transformers) ±0.5゜(measured over unbal.cinch-out) |
mono compatibility | trough separate D/A converters |
サンプリング周波数 | 44.1kHz ±10% |
量子化ビット数 | 16ビットリニア |
レコーディングレート | 4.3128Mbit/s |
D/A変換 | 4倍オーバーサンプリング、16ビット |
キュー精度 | ±1Frame(±13.3msec) |
サーチタイム | 3s以下(random location) |
SMPTE/EBU bus | serial RS422/RS232 |
パラレルリモートコントロール | 25pin remote control socket with fader start input |
電源 | AC100V〜140V、200〜240V±10%、50Hz/60Hz |
最大外形寸法 | 幅320×高さ131×奥行355mm |
重量 | 6.0kg |
Audio Dripper COO 清田亮一