1990年代から2000年代のフラグシップ・
プリアンプ3機種を聴いてみよう!
Mark Levinson No.32L リファレンスプリアンプ
Classe OMEGA MK2 プリアンプ
Jeff Rowland Coherence コヒレンス・プリアンプ
1990~2000年代のフラグシップ・プリアンプの試聴。
各メーカーが多彩でとてもこだわった造りのプリアンプを送り出していた、
1990年代後半から2000年代前半頃。
今回集まったプリアンプが Mark Levinson No.32L(最終OS・マドリガル準拠の整備済)、
classe OMEGA MK2、Jeff Rowland.D.G Coherence(代理店整備済)。
手っ取り早く簡易レビューが知りたい人は一番下まで飛んでください、まとめてあります^^
上流機はSTUDER A725 CD PlayerとプレイバックシステムMPD5&
ORACLE CD1000 CD Transportの2系統を用意。
パワーアンプはLINN SOLO 1/BPモノラルパワーアンプをメインに
Mark Levinson ML2LのA級モノラルパワーアンプも用意。
【試聴盤】
DELIUS/ SEA DRIFT/argo
⇒シンフォニーとバリトン&合唱。3次元でのリアルな表現がかなり難しい盤です。
KARI BREMNES/LOSRIVELSE/FXCD
⇒ノルウェーの女性ボーカリスト。高品質な録音&マスタリング盤。
Pat Metheny/FROM THIS PLACE/Metheny Group
⇒パット・メセニーの新譜。ストリングスとエフェクトなど複雑なコンポジションの楽曲。
KOBY HAYON/GEMINI/KOBY HAYON MUSIC
⇒ギタートリオでドラムスシンバルのエネルギー感などプリの特性が出てくる盤です。
Jacqueline du Pré/Beethoven cello sonatas 3&5/EMI
⇒1965年アビーロードスタジオで録音されたJacqueline du Pré。ピアノ伴奏。
スピーカーはJBL K2 S9800をセット。バランスのいいホーン型スピーカーで
各アンプの個性などをかなり正確に出してくれます。
Mark Levinson No.32L|マークレヴィンソンNo.32Lプリアンプ
1999年秋に登場し10年以上フラグシップで製造されたマークレビンソンNo.32L
マークレビンソンNo.32Lは最終OSを搭載し、2020年12月~21年1月に、
マドリガル準拠のオーバーホール整備を行った個体で、
ほぼ新品時のサウンドを維持した最終ver.の個体かと思います。
試聴盤の1枚目、シンフォニー&バリトン&合唱のDELIUS/ SEA DRIFT/argoは
ゆったりしたスケール感で展開する楽想。合唱とバリトンの対比、
遠近感がすっと余裕で出てるのがわかります。バリトンの存在が真ん中で動じないエナジー度。
若干重くダークな色合いを感じますね。
次にノルウェーの女性ボーカリスト、KARI BREMNES/LOSRIVELSE/FXCDは
今回聴いたプリのベスト!声の質感や密度も上々。サウンドステージがとにかくワイドで3次元的。
スピーカーの遥か上まで達する高さ方向もホレます。
良いプロダクト(音源)の良さを充分に引き出すのが32Lとも言えるでしょうか。
Pat Metheny/FROM THIS PLACE/Metheny Groupは1トラック目冒頭から
メセニーとベースのリンダ・オーの対位法で進むようなコンポジション、
精密なエフェクトなど音楽的な構造がわかりやすく伝わる感じ。
音数が多くても破綻しない精緻さを感じます。
アコースティックなギターJAZZ、コビー・ハヨン・トリオの
KOBY HAYON/GEMINI/KOBY HAYON MUSICはリアルで重いシンバルの
重高音や音色が演奏のテンションをあげてる雰囲気が濃厚に表現される演奏。
JAZZが好きなら”あ!わかる”みたいなサウンドか?
チェロソナタ盤Jacqueline du Pré/Beethoven cello sonatas 3&5/EMIは
サウンドの密度や演奏のテンションが高く感じますが、
若干ザラっとした質感….古い録音である事からこれが正確なのかもしれませんね。
総じて良く、さすが32Lという感じです。トランス唸りもない最終OS搭載のバージョンです。
製造から時間が経ち、常時通電されている方はコンデンサーなどの液漏れなど要注意です。
今回の個体はコンデンサーの液漏れ修理を行いましたので
初期から中期モデルはほぼ劣化しています。
Classe OMEGA MK2|クラッセ・オメガMK2プリアンプ
クラッセ充実のプリアンプ、音楽力の高さに驚くセパレートプリアンプ!
まずクラッセのプリアンプ、オメガ2。聴いた方も少ないのかなと思いますが、
トータルの印象としては音楽が豊かに、楽しく鳴るプリアンプで、
これをまとめたディレクター達の音楽解釈センスがいいんだろうな、と思わせるプリアンプです。
1枚目はシンフォニー&バリトン&合唱のDELIUS/ SEA DRIFT。
とても豊かなLOWをベースに色彩感豊かな雰囲気が漂います。ホールトーンを感じるサウンド。
ソリスト、合唱パート、シンフォニーのパースペクティブのバランスが良く今回のBEST!でした。
(Jeff Rowland.D.G Coherenceもベスト・・・です)
木管楽器の質感が柔らかくそのバランスも印象的。
高音質なマスタリング盤、KARI BREMNES/LOSRIVELSEは声の力強さと
LOWの逞しさなどとても温度感を感じる表現。
ちょっと翳りがあるノルウェーの歌姫が立派に感じるような気がしないでもないかな….
Pat Metheny/FROM THIS PLACEは1トラック目音楽の構造を分解していく
No.32Lとは明らかに異なる表現になるクラッセオメガ。
メモではシンバルの艶やかさやノリ、サウンドステージが高く横ワイド、
ストリングスのパートの意味、などと書いていました。
見ている画面が大きくなった感覚でしょうか。
ギタージャズトリオ、KOBY HAYON/GEMINIは温度感の高さがJazzyで、
ドラムセットの位置が奥にまとまってありLIVE演奏の感覚でベスト!
ML2Lとの相性も良く、より熱血していく感じです。
他の盤、たとえばMiles Davis/Live Around The World【LIVE盤】などもとても良くて、
各LIVE会場の雰囲気を色濃く表現してくれるし、
マイルスをサポートするケニー・ギャレットのアルトの良さも際立つ。
アルトサックスが細身になってしまうプリアンプも多いのですがしっかり表現されてます。
収録されている1989年の「Time After Time」のプリミティブな演奏は、
僕が1988年に聴いたMiles Davisのステージを彷彿する印象でした。
(これだけでクラッセ・オメガMK2プリアンプの印象UP!!!)
次にJacqueline du Pré/Beethoven cello sonatas 3&5はデュプレのチェロが主役でピアノが
バックでサポートしているような雰囲気。
サウンドの太さでグルーヴするようなベートヴェン・チェロソナタ3番アレグロ。
録音の古さはあまり感じない表現でした。
Jeff Rowland.D.G Coherence|ジェフローランド・コヒレンス
今回のJeff Rowland.D.G Coherenceは代理店で劣化コンデンサーなどを交換整備し、
バッテリーを新品交換しキャリブレーションしたばかりの個体。
整備後、電源投入後8時間ほど。ACモードとDCモードで試聴しました。
シンフォニーと合唱のDELIUS/ SEA DRIFTから。オーケストラが扇型になっている事が伝わり、
音が云々というより”雰囲気”が良く、音楽だけに集中できる感覚のDCモード。
ACモードでは若干見通しがおちるか。。。ともかくベスト!
おそらく聴き手によってはclasse OMEGA MK2よりもジェフの方が好きだという人も多いだろう。
おそらく主題からはジェフの方が忠実なのかもしれません。
ノルウェーの女性ボーカル、KARI BREMNES/LOSRIVELSEは質感の柔らかさや
優しさが秀でていました。アタックがトゲトゲしさがないのも特徴でしょうか。
大場時代のWilson Audio System5などとも合うのかもしれません。
Pat Metheny/FROM THIS PLACEは派手さはないですが分解能と聴感上のS/Nが効いてきます。
各パートが重なってきた時の溶けあい方が絶妙。
ベースとギターの対位表現は明快ですがLOW-LOWの締め具合?が物足りなさがあるか??
通電時間などにも関係あるかも。
KOBY HAYON/GEMINI、、シンバルでグルーヴさせるようなJAZZは若干苦手かな?
ラウンジの遠い席で聴いているJAZZ。大人っぽい雰囲気でいいですけど。
ただしECMのMarcin Wasilewsk(マルチン・ボシフレスキ)などはとてもいい!
実は今回の試聴盤にもう1枚、個人的に好きなJohn Abercrombie/Arcade/ECMではジェフがベストで、
リヴァーブ(実際ギター以外でかけているか不明)かけ方など、
各楽器でちがう事が明快になったことは面白かった。
ピアノ、ギター、ベース、ドラムスの立ち位置がとても明快。
Jacqueline du Pré/Beethoven cello sonatas 3&5はジェフローランド・コヒレンスがベスト!
「good!!」とメモってました。。特にピアノの質感タッチ、
フェルトハンマーで弦を叩く感じ、その硬さやチューニングまでわかるような感じ。
打弦の際に柔らかなタッチとなるよう若干毛羽だ立たせるかも?とかを想像させます。
celloの感じは申し分ないです。
Flagship-preamp-2000s-1990s Listen view
3台のプリアンプを8時間ほどかけて聴き通してみた感想・・・・単純に楽しい!!
いずれもこれは駄目じゃん、、、みたいなプリアンプはありませんでした。
いずれも良さがありフィットする音源やパワーアンプやスピーカーがあるような気がしました。
造り手に好みな音楽があって、好きな表現があり、目指すサウンドがあるのでしょう。
なので、イイ・悪いというのはなくて、好ましいか否か、のそれ。
3台をじっくり聴くことで各プリアンプの個性も際立つ気がします。
Mark Levinson No.32Lはやはりハイエンドアンプ・ブランドを
牽引してきたメーカーならではの破綻のなさがあります。
リファレンスプリアンプを標榜してきただけあって、3機種を聴いた後だと
たしかに真ん中にポジションするプリアンプなのかもしれません。
32Lのクオリティが充分に高いことはNo.52Lやジェフ・クライテリオン、
一連のFM ACOUSTICS 266や255などとの比較試聴からもわかっていますので
現代にも通用します。ただし個体差がありますので安定したモデルをお探しください。
また製造からある程度時間が経ち、常時通電されている方は
コンデンサーなどの液漏れなど要注意な時期になってきました。
基板に漏れますので要注意です。
Classe OMEGA MK2 は予想を超えて良く、最近で一番びっくりしたプリアンプ。
実は入荷当初デモ機にしようと思ったプリです。
オメガだけでセットを詰めればもっといいだろうと思います。
特に今回は薄いラックUSMハラーにポン置きなので、しっかりした専用ラックに
設置するだけでもかなり違う気がします。
音楽を躍動的に聴かせるプリアンプでJAZZやロック、大編成のシンフォニーまで
守備範囲が広く、とてもコスパが高いプリアンプの筆頭かなと思います。
Jeff Rowland.D.G Coherenceは、くせ者で本当の姿を現さないような・・・プリアンプ。
基本的なサウンドクオリティは申し分ないです。
DCモードをよく聴くとかなり精緻で微細なところまでフォーカスしています。
乱暴ですがクラシック全般の相性が良く、造り手の意図が明快だと思います。
1960年代録音のデフュプレ盤がベストである事、DELIUSもベストな表現。
コヒレンスで50年代のBLUENOTEを聴くことは辞めてください^^;
ふさわしい音楽は無数にあります。
世界中でブロードバンドやスマホが普及していない2000年頃。
ともかく、しっかりしたサイズのいい電子部品が世界中にまだあって、
それらを惜しみなく投じてプロダクトされたハイエンドプリ。
造り手の個性が反映されていた時代のコントロールアンプ。