今から10年後のオーディオ。デジタルファブリケーションでかわる音の世界。デジタルファブリケーションから生まれるAUDIO。
今のオーディオ界で流行っているデジタルファイルプレーヤー。
わりと原始的な遺産のモデファイで、プロダクト系パソコン技術とプレイヤーソフト、コンバートソフトなどとネットワーク。。LINN DSなどは素晴らしいサウンドですがユーザビリティは若干特殊。今後は飛躍的なイノベートを迎えそうです。最先端ネットワークのデジタル技術は恐ろしいまでに先へいっています。
パソコンが普及してくる1980年代迄は最先端技術はハイエンドオーディオも担っていました。新しいサウンド周辺技術はオーディオを取り巻く環境だけに留まらず、モノづくりや生き方まで変わる、多様化するものをはらんで革新的な世界を生み出しそうです。
オーディオとデジタルネットワーク、さらに。
一昨年昨年あたりから、筑波大学学長補佐、ピクシーダストテクノロジーズの落合陽一さんやGoogle、AMAZONなどが本格的な次世代オーディオ(ミュージック・リスニング)のコンセプトを発表してきました。
特に日本の落合陽一さんが提案しているサウンドスケープは面白いものです。彼は『光や音などの波動をどう使うか、どのようにデジタルファブリケーション(デジタルデータをもとにものを創出)するか、そして波動と物質の関係を機械学習でどう解くかということ。その3つを基礎として、VR(仮想現実)などの応用分野に活用しています』。現在のデジタル・ファイル・プレーヤーとは異次元の発想から生まれる世界。落合さんの研究テーマは「波動工学」、「デジタルファブリケーション」、「メタマテリアル」、「AI/ディープラーニング」、「VR」、「ボディハック」の6分野。人間や自然を「波で扱うか、物質で扱うか、知能で扱うか」の3方向の視点で捉えていくとき、それぞれの分野はつながってくるらしいのです。
ダウンロードしてスマホやデジタルファイルプレーヤーで聴くというスタイルはひじょうに原始的なものとなります。彼のいうディープラーニングとVRなどが混ざってくると自分で音楽を選択する事もなくなるでしょう。さらに言えば、聴き手の体温や脈拍、心情のデータなどから最適なサウンドが最適な音量と音質で聴けるようになるかもしれません。
これをハイエンドオーディオに当てはめていくとどうなるか?
オーディオを趣味としてやっている方は、一般の方よりも音質に敏感でしょう。言い換えると好きな音が在るという事。しかし聴きたい音楽の向う側の景色や音が決まっていない場合もあるかもしれません。また人によってはアナログマスター音源の良さを聴くという人。ヴィンテージオーディオのサウンド等。現代のピュアオーディオを極める人、その多様性は様々です。多様性はダイバーシティとも言いますが、かつてのオーディオはディ―プなマニファクチュアリングなダイバーシティの権化でもありました。破天荒な天才達がオーディオの分野にごろごろ居た時代。現代のハイエンドオーディオが表現する精緻なサウンドステージはセンシティブなVRとも言えるかもしれません。
オーディオの場合はプロダクトに音楽カルチャーと膨大な時間軸が入ってきます。さらに個々人の音楽体験というパラメータが入ると、その多様性は収拾がつかなくなりますね。ですが、一般的な方達のリスニング環境はGoogleなどで充分でしょう。
2035年のジョン・コルトレーンの新譜
例えば、50年代JAZZのBLUE NOTEジャズをヴィンテージJBLと真空管のMcIntoshで聴く事が好きな人には、それぞれのパラメータをすべてデータベース化~ディープラーニングし、VR化すると、ヘッドフォンをせずとも指向性を1cm程迄に絞れると、その人だけに特別に聴こえる音楽を提供できる世界となります。たとえばB&Wで聴く人はJBLのパラメータをB&Wとします。さらにクラシック音楽もホールデータや録音機材のパラメータ加える事でかなり当時の再現が可能となるかもしれません。
現在の録音現場でもノイマンのヴィンテージ・マイクで録ったアーティストの生の音や声はその瞬間からデジタルの0/1 A/D変換が行われています。2010年ほどから世界的に有名になった録音エンジニアの一人、ステファノ・アメリオ氏はA/D変換ハード機をデジタル系企業と共同開発し使用しています。
1967年に他界したジョン・コルトレーンが残した音源は膨大なデジタルデータとして蓄積されています。彼の発言や文献、映像もアーカイブとなっています。さらにはSNSなどでコルトレーンについてを書かれている方も10万人以上いるでしょう。さらにコルトレーンが誕生してから今までの世界の出来事もアーカイブ化されたビッグデータとなっています。これらすべてからコルトレーンが他界した後の現在までの出来事や音楽パラメータをデジタライズ化して抽出するとVRではあるけれど、今とリンクする彼の”生”の音楽が生まれる可能性もあります。2035年にコルトレーンの新譜が完成する余地があると言えます。しかし実存はしません。こうした音楽サービスは世界にはありませんが、技術背景は既にできつつあります。初音ミクは20世紀的な概念でしかないですが、上記はまったくちがう発想。
要はオーディオの多様性をデジタルファブリケーションする世界が、本物のデジタルファイルプレーヤーの姿でしょうか。
デジタルネイチャー時代の音質
10年後のハイエンドオーディオ上流のサウンドンのクオリティは、ハイエンドオーディオの市場規模にかかってきます。理由はサウンドクオリティに関わる要素は、いかにパラメータを細かく設定できるかがカギになるからです。市場規模はエンターテイメント全体のVR性の可能性でしょうか。OUTPUTは聴覚神経系に直接働きかける「チップ?」かもしれません。こうなるとアンプやスピーカーは不要になります。音楽信号を超微弱電流で直接脳へ送るVRです。もしくはヴィンテージスピーカーやMAGICOやYGかもしれません。私的に後者の方が好きです(笑)
今後10年で爆発的に変化するオーディオ&ヴィジュアル&ネットワークにおける、今のオーディオ。
この5,6年でスマホが普及し、2017年国内では約8千万契約ですが、今後10年で今までよりも加速度的に変化していくと言われています。アフリカや東南アジアを中心にこれから数年で20億人がネットワーク化されます。ネットワークインフラが衛星化される事も現実化してきています。おそらく、あらゆる家電やコトがシームレスに気分で編纂される世界になり、IPは200億(SBの孫氏は1兆を目指す)に増加する世界がもう10年程でしょうか。仕事も人とのつながりも変革する事はまちがいない世界。
実はオーディオに限らず、自動車や家、会社、交通機関、公共サービス、コンビニ、カメラ、パソコンなどあらゆるプロダクトやサービスが変革されることでしょう。
今のオーディオはどうなるか?
デジタル化が究極的に進んだとしたら、ヴィンテージオーディオのMarantz#7やKlangfilm EURODYN、ヴィンテージハイエンドのMark Levinson LNP2l&ML2LやCELLO、STUDER A730、STUDER D730MK2、ヴィンテージJBLやALTEC、TANNOY Autographなどの機器は、より一層際立つものとして存在すると考えます。もちろん骨董品としての価値ではありません。整備されたものはレガシーとしてのオーラを醸すはず。デジタルファブリケーションによって質量が近い世界は出来る可能性は高いのですが、それは本物ではない。言いかえればVRが本物らしくあればある程、本物の存在感が際立ちます。
生活やネットワークにおけるVRは急激に浸透すると思いますが、オーディオ機器の本物とVRの差は埋まらない。そもそも埋める志向はないんだと思います。そもそもAI&VRデジタルネットワーク化で出現した空間や音楽、映像はそこに介在するルーツが異なる世界中の人々の共時性が重要で、リンケージされた世界やその世界から派生するモノコトにこそ意味があると思います。
デジタルネイチャー時代の音楽
ミュージシャンや音楽ソフトの流通経路は今以上変わるはずです。パッケージという概念はなく、ダウンロードもなくなるかもしれません。ミュージシャンのステージは今よりもLIVEハウスに変わり、自宅(公共的なスペースから)スタジオLIVE配信に変わるかもしれません。その際リスナーはVR(仮想現実)環境でLIVEに参加する事になるでしょうね。普段のリスニングはミュージックDJ的なセレクターがあらわれるかもしれません。
なので、アナログレコードのジャケットの質感やアーカイブのマッスや儀式は際立つものとなることでしょう。
この10年間程でさらなる2極化が進むものと思います。現在は物理的な距離がなくなりリンクできますが、もう10年経ると言葉やルーツ、多様なニーズがより簡単に手に入るかもしれません。
22世紀になるとジョン・コルトレーンや、マーラーが創造した音楽世界がVRで再現し、対話もしくは、会話、音楽の中入る時代が来るかもしれません。
Audio Dripper COO 清田亮一