A級ヴィンテージ・ハイエンドパワーアンプの競演:狂宴!
1980~90年代のアメリカ、ハイエンドパワーアンプの世界。
オーディオに限らず調整やアライメントで変わるのがヴィンテージ・ハイエンド。
Mark Levinson No.20.5L、Mark LevinsonNo.20L、KRELL KMA100MK2、KRELL KSA80、KSA50
1970年代……..現代ハイエンドの源流
1970年代から80年代にかけて、日本はかつてないほどのオーディオブームで、世界のヴィンテージ品の多くが集まった時代だったそうです。時をおなじくして、アメリカの若い技術者達が自分達のブランドを興しはじめた時でもあります。現代ハイエンドアンプにも多大な影響をおよぼした、Mark LevinsonやKRELL、スレッショルド、GASなど。多くのデザイナーが登場し、明快なコンセプトで個性的なサウンドを引っさげて世界の市場に問うた時代でもあります。
Audio Dripperでは80年代~90年代初頭に発売されたA級ヴィンテージハイエンドパワーアンプが5セットほど揃う予定ですので簡単なサウンドレビューをまとめてみます。
Mark Levinson No.20.5L、Mark LevinsonNo.20L、KRELL KMA100MK2、KRELL KSA80のサウンド。
70年代から80年代にかけて登場したA級ヴィンテージ・ハイエンド・パワーアンプの代表格と言えばMark Levinson【マークレヴィンソン】、KRELL【クレル】でしょう。特にKRELLは設計者Dan D’Agostinoの個性が色濃く反映されたパワーアンプでした。1980年代当時から数年はA級動作回路のパワーアンプのみを販売していたメーカーでもあります。筺体は薄いアルミ板で、金色のネジや銘板は現在のDan D’Agostinoにも通じるカルチェっぽいモチーフがありました。当時はKSA100、KMA100モノラル、KSA50の人気がありました。
KRELL KMA100 MK2【整備済】 レビュー
試聴ソースは知り合いのギタリスト EXPE /EMERALDA 盤。スペーシーな変拍子満載なサウンドですが、楽器はアコースティックからエレクトロニクスまで多彩なサウンドチェックができます。彼はALTEC A5をSRに小松音響さんの真空管ギターアンプでLiveを行っています。2018年現在はブラジルやアルゼンチン、オーストラリア、ドイツ、日本で活動。他にECMピアノトリオ、マーラーインバル(DENON)、Miles Davis ライブ盤等です。
さて、Krell KMA100MK2です。こちらはAudio Dripper TOKYOで2回販売して、2回下取りしました(笑)。ちなみに音が駄目だから戻ってきたわけではありません!みなさんグレードUPして頂きました。KMA100MK2の「MK2」はスピーカー保護リレー回路が採用されたモデルです。基本的な回路や出力TR、電源部コンデンサー、トランスは変わっていません。サウンドの傾向は厚みと熱みを感じさせます。これはリーダーが誰なのかはっきりわかることにもつながります。Miles Davisライヴ盤などはその傾向がはっきり出ます。スピーカーからの音離れや高さ方向の表現も充分魅力的です。
私個人で購入した事があるKREL製品は12台程。KSA100,KSA80、KSA50×2、KSA200、KAS100、PAM2、PAM3、PAM7、KBL(CDPやMD1なども)です。パワーアンプに限っては初期というわれる純A級パワーアンプがほとんどでした。一番最初に入手したのはPAM2です。
かつて購入したクレルのパワーアンプを含めて扱いやすいモデルがKMA100MK2です。KSA200やKSA100はサイズが大きいです(奥行60cm)。サウンドは魅力溢れるものです。KAS100以降の可変A級は消費電力の面で魅力があります。サイズと発熱、スピーカー保護という面からKMA100MK2は扱いやすいです。空冷ファンによる冷却なので狭い部屋で音量が小さい場合気になるかもしれません。KMA100MK2のスピーカー駆動力は1Ωから担保する事で有名で当時はオールリボン型のApogeeやWILSON AUDIOのパワーアンプとして人気。さらにはJBLモニター系やALTEC(515B以降)の15インチウーファーとの相性も良かったため合せられていたパワーアンプです。
今回のKMA100MK2は入力から電流を制御するレギュレーター基板を中心にリザイエ様で整備したペアとなります。
KRELL KSA80【整備済】 レビュー【ご成約 ありがとうございました】
KRELL KSA80はヒートシンクが剥き出しとなり自然空冷となります。基本構造はKSA50MK2を踏襲しています。KSA50の人気の陰にかくれがちですが、KSA50ではエネルギー感が不足する場合にKSA80は重宝します。サウンド面の温度感もかなりあるアンプ。
クレルKSA80は無骨なデザインに見えますが、モダンなインテリアの中では意外と映える佇まいです!クラシックからコンテンポラリーJAZZ、ロックなど守備範囲がひろいパワーアンプです。浮遊感やサウンドステージの精緻感は弱いかもしれません。こちらもリザイエ様で整備した個体です。
KRELL KSA80は定価が安かったモデルですが、戦略価格で実際はコストがかかった製品と言えます。現在はDan D’Agostinoからクラシックラインとして本国で170万円程で販売しています。ちなみに設計者のDan D’Agostinoはイタリア系アメリカ人でJAZZが好きなアンプデザイナー。おそらくこの時代までは彼の好みが色濃く出ているものと思います。KRELLデジタル社を興したあたりから外部の意見や売上などオーディオとは別に経営という側面から製品作りを行うに至ったと思われます。
Mark Levinson No.20L 【整備済】レビュー
■Mark Levinson No.20L モノラルパワーアンプ 定価¥2,980,000. ハーマンジャパン 販売価格¥798,000. 6か月保証 外観:-A
Mark Levinson No.20Lに限らず、A級アンプは整備状況でそのサウンドは大きく変わります。特に製造から10年以上経たアンプはよく言う『……..あのアンプの音は云々』はほとんど当てになりません。同一機種でも内部部品や整備状況、発熱対策によって変わってきます。ずっと使ってないアンプはNGです。機械はある程度使っていかないと死にます。カタチだけでは駄目ですし、オリジナルにこだわる場合はオリジナル部品と回路図の数値の両方が重要です。
今回のNo.20Lは個体そのものや内部制御基板の状態が良いものでしたが、販売するにあたり日本国内でマークレビンソンの修理整備を一番行っている技術者に依頼しました。オーダー方法は「修理」ではなく「ペア整備」です。過去に販売された中古No.20Lの中でも極上でしょう。内部ボード類の部品は左右筺体CHで揃えています。
サウンドは大柄な筺体に関わらず、パースペクティブがいいアンプです。スピーカーから放射され壁面に立体的に散らばる(ミックス)EXPE /EMERALDA盤は精緻に再現されます。音数が増えて聴こえるかもしれません。増えた分煩く感じる部分は使いこなしで対応する感じでしょうか。また、この盤はリズムが複雑に展開されますが、そういった変化やフローが際立ちますので、中低域・ウーファー帯域の制御に優れたパワーアンプと言えます。Miles盤のソロの掛け合いや間合い、テンションの高さはMark Levinsonならでは。基本的にはNo.20.5Lとの差は極めて少ないものです。ちなみにNo.20Lはバージョンが2つあります。ゴリッとした鳴り方が好きな方は前期がおすすめです。
スピーカーケーブルは純正フィッシャー端子4ケ(本来はご使用のスピーカーケーブルをハンダ付けします)とベルデンケーブルなどが使いやすいスピーカー端子の計8つが付属します。
Mark Levinsonのフラグシップ機はNo.20LシリーズからNo.20.6Lまでのシリーズがピークと言えるかもしれません。制御基板の回路の天才的な設計は凄いものです。さらに搭載された部品などはコスト度外視した軍事用と言える部品も使われています。ちなみにNo20シリーズはKRELL KMA100の約2倍の定価だったと記憶しています。
こちらのNo.20Lはハーマン・マドリガルが修理する際のMark Levinson指定部品で整備しております。20万円以上のコストとなります。交換部品は総計80個で、代理店修理をさらにすすめた見込整備(ウィークポイントを事前に整備)となります。ここ数年国内で販売したNo.20Lの中では一番状態が良いと言える個体ペアです。
Mark Levinson No.20.5L 【見込整備】レビュー
■Mark Levinson No.20.5L モノラルパワーアンプ 定価¥2,980,800. ハーマンジャパン 6か月保証 外観:A【ご成約 ありがとうございました】
1970年代から続くML2Lを継承したMark LevinsonクラスA モノラルパワーアンプ最終形のパワーアンプがNo.20.5Lです。2017年は3セット扱ったパワーアンプです。サウンド面はNo.20Lをさらに洗練したものです。実質的には兄弟機です。ちなみに20.6Lは制御基板にテフロンを蒸着したもので、剥離の心配もありますが整備可能です。さて、No.20.5Lですがミッドローの充実ぶりが顕著でNo.20L同様に音楽に躍動感が出てきます。今回の個体もコレクターアイテムとしてご使用できる内容です。クラシックやボーカル、JAZZまで対応するソースの幅広さが出色。
スピーカー端子はWBTのクラシックTYPEとなります。ユニバーサルで大きなスピーカー端子も確実にロックできるものです。
こちらのNo.20.5Lもハーマン・マドリガルが修理する際のMark Levinson指定部品で左右筺体の部品を揃えた整備をしているため20万円以上のコストとなります。交換部品は総計80個で、代理店修理をさらにすすめた見込整備(ウィークポイントを事前に整備)となります。ここ数年国内で販売したNo.20.5Lの中でも状態が良い個体ペアとなりました。
1980年代のA級パワーアンプ
製造から30年以上となりますので、そろそろヴィンテージオーディオ機器の領域に入ってくるクレル、マークレビンソンですが、2017年のハイエンド製品にはない個性や”勢い”や、価格バリューなどがあり、今でも魅力あるものです。今回ご案内したパワーアンプはすべて現代ハイエンド機器の回路をデザインした設計者達の作品でもあります。
オーディオ機器には勝ち負けはありません。主役は音楽であり、聴き手です。ご自分の好みや環境で選べばいいと思います。中古ハイエンド機器は1台1台で音がちがいます。おおざっぱにあの機種の音がいいとかどうだとか、という不毛な議論は意味がありません。オーディオに限らず調整やアライメントで変わるのがヴィンテージ品です。
今回もう1台、A級パワーアンプをご用意する予定です。