ML7L はMark Levinsonプリアンプの、
王道だろうか。
現代ハイエンドプリのルーツ|Mark Levinson ML7L プリアンプ 2021.3オーバーホール整備
2021年の現代、Mark Levinson ML7Lを眺めると、とてもストイックな佇まいで
ライトミドル級ボクサーが減量を行い、無駄を削ぎ落したようにも見える。
高さは1DINしかなく、右からグレイボディのスペクトロール製2連ボリューム、ゲイン切替え、
mono/stereoモード切替、tape、セレクター類。
ふだん触れる場所はメインボリュームとゲイン、セレクターだろう。
さて、ML7Lを選ぶ時に迷うモデルはJC2、ML1L、No.26L、cello Encore、
初期KRELLのプリアンプあたりだろうか。
1980年代からのNo.26L系、cello Encore系、初期KRELL系は
似たような思想がいくつかあってAクラス回路とディスクリート回路、
カップリングコンデンサのタイプ、メインボリュームなどだ。
この時代のプリアンプは現代ハイエンドのベースになっているとも言えるかも。
ハイエンドプリアンプの歴史、誕生がMark Levinson LNP-2Lからだとすると、
ML7Lは第2世代機にあたる。
じつはこの第2世代機をデザインした回路デザイナー Tom Colangelo(トム・コランジェロ)や
John Curl (ジョン・カール) 、初期クレルのDan D’Agostino(ダン・ダゴスティーノ)は
2010年代に入っても第一線で活躍している(していた)事に驚く。
1985年に登場したMark Levinson ML7L プリアンプは、
MLAS在籍時のマークレビンソンの最後のモデルとなる。
その中でもマークレビンソンML7Lは”ハシリ”で良い部品のオンパレード!
このプリアンプをオーバーホールした技術者も測定器や当時の航空機、
ミリタリーグレードのパーツが多数使われている、と言っていた。
30年以上前で200万円の定価をつけたプリアンプはたしかに”立派”な理由が内部に見える。
そこにヘンな幻想やまやかしはない。あるのは超一流の電子部品と贅沢な基板だけ。
表面実装パーツや交換不可な電子パーツもほとんどない。
![Mark Levinson ML7L PREAMP](https://audiodripper.jp/wp-content/uploads/2021/03/f853002240fc5de8a8ae347b7fc4627e.jpg)
Mark Levinson ML7L PREAMP
以前、あるオーディオショップの方と2015年あたりに登場したハイエンドプリとML7Lを
交互に聴き比べをした。2人でその差に驚いた。ちゃんとしたML7Lはそうそう聴く事はできない。
繊細でサウンドステージがしっかりでて、レンジ感が広いのは2015年のハイエンドプリ。
ML7Lは音がグッと前に出てきてエネルギー度合いがグッと上がる、熱量も上がるような・・・
ある意味での癖の塊だった。
2人でどちらが好きか?と答え合わせをしたら、2人ともマークレヴィンソンML7Lだった。
しかもほぼフルマークで。
一方は最新でアルミ削り出しのほどほどの有名機。。。
音楽(ソース)の再現性、提示の仕方などが、とても異なった。
だからと言って、誰にも等しくML7Lが良いわけではないと思う。
聴き方の問題、違いなだけ。
音楽ソースに入っている完全なパースペクティブが再現でき、
レンジに不足がないプリアンプの評価が高くなる場合もあるだろう。
・・・それでもフルマークはML7Lだった。
この時代の電子部品の良さ(余裕)は重要なポイントかもしれない・・・
この時聴いた僕と彼の共通点は、過去に楽器を演奏していた、
もしくは演奏するというところ。
![Mark Levinson ML7L PREAMP](https://audiodripper.jp/wp-content/uploads/2021/03/Mark-Levinson-ML7L-PREAMP-OH.jpg)
Mark Levinson ML7L PREAMP|オーバーホール整備
仕事で同じようなプレゼンテーションを受けても、その事業の未来を語る人の
熱量や夢が魅力的に感じることがある。
一方で、精緻な数字を基にプレゼンされてもケチのつけようはないが、未来が今イチ見えない……
Mark Levinson ML7L のサウンドは乱暴に言うと『これに賭けてみるか?!』的な感じだろう。
オーディオはそんな直感が重要でもあるし、幸せの近道でもある。
1970年代、80年代、新しい領域にチャレンジし始めたマークレビンソンや John Curl (ジョン・カール) 、
Tom Colangelo(トム・コランジェロ)は、まだ年齢30代頃だろうか。
ML7Lはある意味では現代も続くハイエンドプリのルーツになるプリアンプとも言えるし、
新しい時代を切り拓いた熱量が、選択するパーツやサウンドにも現れていたのだろうと思う。
![Mark Levinson ML7L PREAMP|マークレビンソンML7L](https://audiodripper.jp/wp-content/uploads/2021/04/Mark-Levinson-ML7L-Pre-amp-use.jpg)
Mark Levinson ML7L PREAMP|マークレビンソンML7L
今回のMark Levinson ML7Lは劣化したパーツは全て交換し調整をした個体。
過去にまったく修理跡がない個体だったので、消耗部品はコンデンサを中心に20ケ以上あった。
整備前に聴いたときはとても聴けたものではなく、S/Nも悪く左右の音圧差もあった。
でも買い取った理由は外観もさることながら、基板状態の良さ。
この個体のメイン基板は写真でもわかると思いますが状態はとても良く、
スペクトロールのメインボリュームの内部も綺麗で分解整備もおこなった。
![Mark Levinson ML7L PREAMP|マークレビンソンML7L スペクトロールボリュウム分解整備](https://audiodripper.jp/wp-content/uploads/2016/07/95e05c624d07286a976a4f7df033e5b4-1.jpg)
Mark Levinson ML7L PREAMP|マークレビンソンML7L スペクトロールボリュウム分解整備
外観が綺麗なのは当たり前(汚い機器は嫌いなので買い取りません^^;)で、
重要なのはメイン基板や電子部品の状況だろう。
昨今ではヴィンテージハイエンドプリアンプで交換するパーツで
多くなってきているのが半固定ヴォリューム(可変抵抗器)。
簡単に言うと回路調整が目的なので、これがNGになってくると
左右CHの状況が変わってくることになるので要交換な部品。
![■Mark Levinson ML7L PLS154 s/n. 0297 ■整備メニュー ・シャーシ洗浄 ・ボリューム分解整備(スペクトロール) ・電源部劣化パーツ、コンデンサー交換 ・電源部純正ブレーカースイッチ交換 ・切替スイッチ類接点クリーニング ・ラインアンプオフセット調整用半固定VR接触不良にて交換 ・出力DCオフセット再調整 ・バイアス再調整 ・スペックチェック ・動作チェック ※PHONO MM L2カード搭載 ■交換部品 個 数 4700μ35V-SPRAGUE 53D 2 68μF 25V-SPRAGUEタンタル 2 4.7μF 25V-SPRAGUEタンタル 3 220μF 63V-Vishay/BC 2 100μF 63VVishay/BC 10 10KPOT 半固定VR 2 電源部ブレーカースイッチ 1](https://audiodripper.jp/wp-content/uploads/2021/04/Mark-Levinson-ML7L-PREAMP-Overhaul.jpg)
Mark Levinson ML7L PREAMP|マークレビンソンML7Lオーバーホール整備
Mark Levinson ML7L PLS154 s/n. 0297 オーバーホール整備概要
■整備メニュー
・シャーシ洗浄
・ボリューム分解整備(スペクトロール)
・電源部劣化パーツ、コンデンサー交換
・電源部純正ブレーカースイッチ交換
・切替スイッチ類接点クリーニング
・ラインアンプオフセット調整用半固定VR接触不良にて交換
・出力DCオフセット再調整
・バイアス再調整
・スペックチェック
・動作チェック
※PHONO MM L2カード搭載
■交換部品 個 数
・4700μ35V-SPRAGUE 53D 2
・68μF 25V-SPRAGUEタンタル 2
・4.7μF 25V-SPRAGUEタンタル 3
・220μF 63V-Vishay/BC 2
・100μF 63VVishay/BC 10
・10KPOT 半固定VR 2
・電源部ブレーカースイッチ 1
![Mark Levinson ML7L PREAMP|外観も美しい個体です。](https://audiodripper.jp/wp-content/uploads/2016/07/Mark-Levinson-ML7L-PREAMP-used-1.jpg)
Mark Levinson ML7L PREAMP|外観も美しい個体です。
これから10年、20年先も現役で音楽に魂を捧げることができたら本望だろう。
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