あるミュージシャンの方が長年つかっている相棒、
STUDER D730MK2

STUDER D730MK2 RFエンタープライゼス
STUDER D730MK2のオーバーホール整備
久しぶりのSTUDER D730MK2のオーバーホール整備をお受けしました。
最近STUDER A730(あるシリアル番号群)とSTUDER D730MK2はオーバーホール整備を
行っても動作が不安定になるケースが多くなり、当社ご購入品以外の修理整備は
受けておりませんが、ダメ元でもいいという事で、不動作のD730MK2をオーバーホール整備。
ちなみにA730もシリアル番号で全く整備不可や動作不安定なバージョン、発熱対策済み、
マイナーチェンジなどいろいろありますので、ご購入される方はお店の方や出品者に
しっかり聞いて良い個体を入手くださいね~
さて、今回のSTUDER D730MK2の整備前の状況ですが、コンデサの状態があまり良いとは言えません。。
ほとんどが外被にひびが入ったり、底抜け液漏れなど多数。
製造から30年以上経ていますが、未交換の消耗部品が多数ありました。

STUDER D730MK2|整備前|コンデンサカバー落下
メモリー電池も消耗してました。これをスーパーキャパシタとも言われていますが、
基本的にはサウンドの質には関係ありませんw
これは放送など複雑なプレイプログラムを支えるための部品となります。

STUDER D730MK2メモリー電池消耗|電圧0.84Vしかありません
下の写真はメイン基板となります。右側トランス2ケあるパートが出力部となります。
左が電源部です。手前がDA変換パートになります。

STUDER D730MK2|インPCBを取り外し電子パーツを交換
下はPHILIPS CDM4.19でレーザーダイオードの出力は新品同様だったので分解整備を行いました。

STUDER D730MK2|PHILIPS CDM4.19を分解整備
リニアモーター部も分解整備!ドライブメカ部のサーメットトリマが
よくヤレますので交換すればOKです
ドライブメカの丸ごと交換はよっぽどとなります。
だいたいはレーザーダイオードの交換か分解整備を行えば復活します。

STUDER D730MK2|PHILIPS CDM4.19を分解整備|リニアモーター分解
ちなみにSTUDER D730MK2のCDM4はCDM1MK2の筐体を一部使用しています。
レーザーダイオードは新しいタイプとなります。

STUDER D730MK2|PHILIPS CDM4.19を分解整備
おそらくかなりのコンデンサが製造時からのもので、外被がひび割れしていたり、爆裂していたり、
変形したものが多数ありました。

STUDER D730MK2|消耗・破損コンデンサ一部(電源部など)
メイン基板にあった多くのコンデンサ、アナログ出力部のコンデンサの状況です↓
脚やボディから液漏れし一部は電解液が基板で炭化。
合計30ケ交換しました(VishayBC/Roederstein もしくはSTUDER、PHILIPS製)。

STUDER D730MK2|破損・劣化したコンデンサ
オペアンプは7ケ交換しました。1つのボディに2つのアンプが入っています。
下記のオペアンプ(タイ製PHILIPS)にバラつきがあるため新品交換しました。
左右バランス出力のアンプにバラつきがあると左右CHで正確なモニタが出来なくなります。
当時のオペアンプはタイ産が使用されていたようです。
今回は英・米Texas Instruments(Burr-Brown)の新品へ交換。
但し音がシャープになりすぎないタイプを選択しました。性能を上げればいいというわけではありません。
もちろんこれまでのものより高品質でバラつきがないアンプです。

STUDER D730MK2 |オペアンプ(7ケ)
3日ほど動作テストを行いましたがとても良い状態でなっています。

STUDER D730MK2|オーバーホール整備
オーバーホール整備後のスペック点検ですが優秀な状態です。
左右チャンネル同時測定の歪率は0.014と0,015%!!

STUDERD730MK_1KHzの正弦波の歪率0.01%台と優秀な成績です
1KHzの正弦波もキレイです。

STUDERD730MK_1KHzの正弦波の拡大写真
アイパターンも問題ありません。

STUDERD730MK_アイパターン FFTの画像
STUDER A730やD730MK2の鳴らし方

STUDER A730・D730・D730Mk2 Parallel Stand
STUDER D730MK2やA730はとにかく発熱に気を付けてください!
洒落乙なサイドウッドは速攻はずしてください!吸気・放熱孔をふさいでいます。
またスイングアームメカなので当然、平行で使う機器です!
またA730やD730 Mk2のスイングアームには斜め設置の専用機構が付いていると言われてますが、
200台以上分解整備、オーバーホール整備を行っていますが、そのような機構はついていません。
そもそもそんな高度な機構があるなら専用の制御回路があるはずですがありません。
プロの現場で斜めにして使っていることはありません、あるとしたら移動時のみかと思いますが、
A730/D730を移動設置する場合も平行設置用ケースラックがありました。
サウンド面でA730が蛇口全開と表現されたりしますが、そんあ事はありません。
もっと凄いCD機があります。PHILIPS LHH2000をしっかり整備した個体と比較するとカワイイものです。
その理由はたくさんありますがトランスや基板の質、基板の使い方、構造など全てに渡ります・・・・
ではD730 とA730ではどうか?基本的には同じですが、D73oは集積回路に仕事をさせている
割合が多くなり、出てくるサウンドも現代的でレンジが伸びます。この辺は趣味なのかもしれませんが
ICの仕事量が多くなるということは壊れた際が厄介になるということかと思います。
前述のLHH2000はそのヘンの造り込みが凄いです。
但し、そのままじゃ使いモノになりませんので誤解ないようにw
STUDER D730MK2・・・今回のオーバーホール整備で交換した部品です。

STUDER D730MK2|オーバーホール整備交換部品
しばらく適切なサウンドでモニタできるSTUDER D730MK2になったと思います!
日本人の皆さん、海外でもご存じのアーティストの方ですので作品作りにも反映できれば幸いです!

STUDER D730MK2