cello AUDIO SUITE P301 double module 2017.12
10代の頃にオーディオをはじめた理由は単純で、
マイルス・デイヴィスのミュートのトランペットの意味や、
オーネット・コールマンのアルトサックスを真似るため、
自分で演奏した時に、それに負けないエネルギーを
聴くときも欲っしたから、という単純な理由。
オーディオはあくまで自分の演奏をサポートするための機械。

Equinox Hotel Hudson Yards New York City
モジュール式のcello AUDIO SUITEの
アウトプットモジュールをダブル化するとどうなるか?
P301のダブル化による余裕はシングルベッドとダブルベッド程の差が生まれたような・・・・
そしてバランスがゲインのような作用があります。左右CHが独立した複層基板なので、
そこまで大きな差はないはずなのに・・・

cello AUDIO SUITE|チェロ・リファレンス・プリアンプ・スイート
またまたcelloのコト。cello AUDIO SUITEのモジュール
だいたいのプリアンプの出力系は1つの回路で出力端子部分でバランス端子やRCAなどパラレル化したりします。
一方、チェロのスイート用のモジュールP301は入出力は1つしかないアウトプットモジュールです。バイアンプなどの場合はcello PERFORMANCE側でトライワイヤなどにします。

cello AUDIO SUITE リアパネル RCAモジュールも装備
上のチェロ・パレットの場合はリアパネルに向かって左側の下側2つのFischer端子部がプリアウトになります。たいていのcello AUDIO SUITEには一つのP301をセットします。

cello AUDIO SUITE
わりとレアな音の余裕度。
P301ダブルの個体は入力側はシングルモジュールです。出力側だけダブル化してます。P301シングルの違いはMark LevinsonのML6とML1の違いやLINN KLIMAX KONTROLのモノ使いの時と似ています。費用対効果は高くはないですが、やはり差がつきます。
ちなみに世界の市場でもガリがなく、完全動作する『cello AUDIO SUITE P301出力モジュール』が単独で販売される事はありません。なぜなら、P301がないとスイートのメインボリュームがコントロールできないからです。このようにするには、もう1台cello AUDIO SUITEを買って2つの出力を合わせるしかありません。
これと同じような仕様は過去に1台だけ市場に出たことがあります。

cello AUDIO SUITE P301×2スペシャルバージョン
さて、cello AUDIO SUITEの出力モジュールP301を2つ搭載し、モノラル化した場合のサウンドはいかに?
聴いてすぐ感じるのは全体の余裕度やサウンドステージを埋める密度の情報量に厚みが出て実存感が増すところです。グラデーションの諧調も細かくなり、プリアンプのドライブ力にも気づきます。特に音が前や奥にダイナミックに展開して音の出方や音楽の鳴り方が変わってきます。モノラル仕様の場合はバランスがゲインのような役割を果たしているのか変化量が多く感じます。

cello AUDIO SUITE|左右バランス
今回のバージョンは過去に扱った全てのプリアンプの中でも特に衝撃を覚えたcello AUDIO SUITEです。モジュール式ですから、いろんなバージョンがあってもいいのでしょうね。
高い分解能や恐るべきS/N比、精緻な立体感があると評価されたプリアンプよりも衝撃を受けました。立ってるステージなのか表現領域そのものがちがう感覚です。あまりこう感じる事はありません。でもこれがオーディオ的に正しいのか、どうかはわかりません(笑)

cello AUDIO SUITE入荷時(P301はスぺアだったものを装着)
じつは入荷後、サウンドを聴いて368万円のUSEDプライス(整備込み)で販売しましたが、聴くにおよび私的にホレてしまい現在は販売をストップしました。。。
Audio Dripperの中古価格は市場価格からも検討しますが、一番は音楽の表現力やブランドの背景、使用されている電子部品、将来の整備性から価格付けをしています。特に使用されている部品や整備性は重要です。たとえばオーバーホール済みのSTUDER A727やA725が新品当時の定価と変わらない中古価格はそうした評価をさせて頂いているからで、一般的にどうなのかはぶっちゃけまったく気にしていません。

cello AUDIO SUITE
好きとか、それほど好きじゃないとか。
このcello AUDIO SUITEの価格は過去当社で販売したプリアンプの中で一番高いのですが、それでも368万円。たしかに高いのですが、安いとも言えます。なぜか…..?
聴いてて、ワクワクするからです。あくまで私的な”好み”やツボです。
なんだ?好みかと思うかもしれませんが、突き詰めると個人にとって好み以外の最上の指標はおそらくありません。法人にとっも同じです。
cello AUDIO SUITE(p301×2)を聴いて人によってはピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。それは食べ物の好みや、彼女や彼氏の好みと同じでしょう。さらに『好き』は一つではありませんし、音楽経験やオーディオ変遷で変化します。自分自身の中に好きなバリエーションはたくさんあるわけです。正しいとか否かや順位を決めるのが趣味ではありません。ましてや勝ち負けのような白黒がないピースフルな世界です。
あるお客様は超ハイエンドの機器や超レアなヴィンテージ機器扱いながら、中学生の頃に聴いたラジオの音を聴きたい、と。シンプルに考えると、ラジオで良くネ?と思うかもしれませんが、大人の心模様はそう単純化できない。ある方は最高のコンディションのものしか買わないという方や、同じ機種をマニアックに複数台入手される方……
僕にも想像できない楽しさを見つけている方が多数です!

celloやMark Levinsonを複数台所有されるユーザー様
で、お客さん的にはどーなのか?この、スイートは。
Audio Dripperのお客様でcelloやMark Levinsonなどオーバーホールした”真っ当”なサウンドに慣れ親しみ、cello AUDIO SUITEのサウンドも知っている方も『これは別物だ…..でも、なんでだろう』『プリアンプがドライブしている感じがわかる・・・』など。他のお客さんも似たようなインプレ。ただP301を2つにしたがけだよね……ドーピングでしょ!みたいな感じでした。確かにドーピングです。
使用方法は簡単で実際にモノラル使いもバイアンプ使いもFischer端子の抜き差しだけで可能です。内部の配線は裏面のバスバーのネジをたくさん緩めて締めるだけで装着できます。特に配線のやり直しは不要です。もちろんマスターパワーサプライも1台だけで大丈夫です。
p301を1台にしたシングル仕様もこのままで使えます。シングルアンプ、バイアンプ、モノラル仕様などプリアンプのユーティリティのひろさも良好です。

cello AUDIO SUITEのリアパネル|P301モノラル使いの接続
個人的に爽やかさが魅力のATC SCM50Tslが逞しく360度のサウンドステージの密度がUPする感じがプリアンプの交換で如実に体感できます。一回り大きなスピーカーにしたような塩梅。
クルマのエンジンで言うとトルクフルだけど上まで回ってレッドでさらにパワーが出る感じ。しかも官能的に。元々はスタジオ用途のcello AUDIO SUITEだったのでクルマでも一般市販車でもちょっと毛色のちがう感じなのでしょうか・・・

Porsche 911 GT2RS
足回りでいうとウレタンブッシュのバランスがとてもいい感じで路面状態を手で触ってる剛性感と柔もある感じ。ボディで言うとロールケージが入っているクルマ。ただし溶接まではされていない。もしくはフルケージ状態までいっていない市販車。また最新デバイスがないので自分でコントロールする必要あり!みたいな感じです。サーキットなどに持ち込むととても楽しく走れて、へこたれずに、自走で帰宅できるクルマですね^^
人によってはヴィンテージなアストンマーチンみたいな感じなのか・・・

cello AUDIO SUITE|P301ダブル搭載バージョン
まだこれはオーバーホールしていない個体なので、もっと良くなることは間違いありません(おそらく)。なぜなら現状でも駄目な部品がピンポイントでわかっているので、そのあたりを交換して、マスターパワーサプライのブロックコンデンサをフレッシュにするとまた変貌するはずです。
あとは左右チャンネルの綿密なバランス取りで音楽の表現力や音楽に内包する人の悲しさや喜び、アーティストの光と影をも掬いだすようなコントロールアンプになるといいなと思います。もちろん音楽のエネルギーや人の情熱を伝えるプリアンプにかなり近いものになると思います。
また他のcello Reference シリーズのcello AUDIO PALETTEやcello PERFORMANCEに接続していないため早く、繋げて聴きたい衝動があるのですが、しばらく東京に居るため聴けません ( ノД`)…