PHILIPS LHH900Rのオーバーホール整備
フィリップス限定モデルCDプレーヤーの整備。
PHILIPS LHH900RはSTUDER A730やD730のプロ用ユーティリティの
替わりに充実した電源部や筐体が備わった、と考えていいCDプレーヤー。
PHILIPS LHH900Rとは?
1996年に発売されたフィリップス製の500台限定のCDプレーヤーが900Rです。ドライブメカはCDM4(実質的にはCDM1のアルミダイカストモデル搭載)スイングアームメカで、D/AコンバーターはDAC7です。注目はデジタル部の電源部です、さらにはアナログ部の電源部の容量。さらにはNFB回路の採用です。アナログ出力部分はバランス回路となっています。
PHILIPS LHH900RのドライブメカはCDM4ですが、ほぼCDM1同様のアルミダイカストモデルが搭載されています。非常にコストがかかったものです。おそらくピックアップの重要部品であるレーザーダイオードレンズはドイツのRodenstock製かCarl Zeiss製のガラスレンズのはずです。
また下の基板はPHILIPS LHH900Rのドライブメカ本体の裏面、制御基板の素材も贅沢な基板でハイエンドアンプの制御系基板と同様の質になっています。
今回のPHILIPS LHH900RのCDM4(CDM1)のレーザーダイオードの出力低下はありませんでした。出力低下がある場合は別途、新品同様品への交換となります。サーメットトリマーが錆びていましたので新品へ交換します。
PHILIPS LHH900Rは筐体や基板などとても贅沢な造りで当時の販売価格は450,000円のサービスプライでした。あまりにも低価格の戦略価格の設定かと思います。面白いのは充実した電源部(DA変換部、アナログ部)のコンデンサーですがこれは日本製ケミコンにPHILIPSの表皮だけを巻いたものでした。既に25年近くの経年劣化で容量がコンデンサー毎に変わっていました。現代では入手不可能です。今回は200万円クラスのハイエンド機にも搭載されるドイツ製のコンデンサーへ変更しました。
PHILIPS LHH900Rはおそらく日本企画のCDプレーヤーだったのではと推測します。その目的はいい音のための探求であったことは間違いありません。例えばSTUDER A730やD730などの業務用CDプレーヤーと比較しても使用部品に関しては同等以上です。
販売から25年以上経つPHILIPS LHH900Rの弱点は電源部、電解コンデンサーの劣化。使用本数が多く、消耗しているため、ほとんどのPHILIPS LHH900Rは本領を発揮していないはずです。アナログ出力部のバランス回路に供給する部分でもあるので左右差が出る個体も多いはずです。PHILIPS LHH800なども同様でしょう。
また電源ONから2時間ぐらいのサウンド変化がとても大きいと言えます。充分に通電したPHILIPS LHH900Rはとてもリッチで密度感濃いサウンドです。
充分に通電し、アナログ出力はバランス出力が良いようです。当時のPHILIPS社、および日本マランツはデザインなどはともかく本当に自分たちが造りたい、世に問いたいオーディオ機器を製造していたのだと思います。
当時の経営会議にこのCDプレーヤーを定価45万円(原価・・・)で通すことは担当部長・課長には相当な勇気や使命感があったんだと思います。コンストラクションや内容は素晴らしいデジタルプロダクトです。
PHILIPS LHH900Rのオーバーホール整備費用は24万円(税別)です。とても高いと思いますが、そもそもの価格設定はSTUDER D730MK2同様に100万円を超えていても不思議ではありません。内部はA730やD730のプロ用ユーティリティの替わりに充実した電源部が備わった、と考えていいプレーヤーです。
オーバーホール後のサウンドも電源ONから1時間程経つと充実したサウンド、どっしりとしたベースに広がるサウンドステージは充分に魅力的です。